2016年02月19日発行 1416号

【ミリタリー・ウォッチング 緊張高める朝鮮の「ロケット」発射 政府は好機≠ニ南西諸島大軍拡】

 朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)政府は2月7日、「人工衛星」とするロケットを発射した。東アジアの緊張を高め、戦争勢力に挑発と軍拡の口実を与えるもので断じて許されない。日本政府は「絶好の機会」とばかりに、沖縄、南西諸島での自衛隊増強計画の実行、推進に拍車をかけた。

無用のPAC3配備

 防衛省は、沖縄県や市町村向け説明会(2/4)を開いた。「発射は南向けでミサイルが先島諸島上空を通過する可能性があるが、ミサイルがわが国に向かって飛翔(ひしょう)することは通常起こらない」としながら、「万が一に備える」(空中で爆発し破片が落下する等)として地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を輸送艦(強襲揚陸艦)「おおすみ」と輸送艦「くにさき」で広島県呉から運び、石垣島と宮古島に配置。さらに、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)搭載の「きりしま」などイージス艦3隻を東シナ海などに展開させることを発表した。

 動員したのは、PAC3やイージス艦の迎撃ミサイルとその部隊だけではない。陸上自衛隊の警備部隊のほか、化学防護隊を含む被害対処部隊を宮古、石垣、多良間、与那国の各島に派遣した。また、米海軍とも連携し、昨年11月に設置した「同盟調整メカニズム(ACM)」も活用。これは、戦争法や新日米ガイドラインの実動演習である。

 7日当日、当然破壊措置は発動されず、PAC3も何ら動かなかった。PAC3やSM3がロケット発射に対応できるものでないことは、3年前の朝鮮「人工衛星」発射の際でも明らかだ。大気圏外を飛行するミサイルにPAC3やSM3は届かない。空中で爆発し落下してくる破片を迎撃できるシステム、技術にはなっていない。これは軍事に詳しい識者の常識だ。

計2千人を増強

 では、これほど大掛かりなパフォーマンスで頼りになる自衛隊≠演出した狙いは何か。

 水陸機動団(3千人規模)新設を軸に新中期防に明記された沖縄、南西諸島の自衛隊増強計画を加速することである。

 この間、南西諸島での自衛隊増強と基地建設計画が急ピッチで進められている。石垣島には、陸自部隊を配備し、隊員500〜600人を配置する計画を公表。有事の際の初動を担う警備部隊のほか、地対艦ミサイル(SSM)や地対空ミサイル(SAM)の部隊を配備する計画だ。部隊や物資の輸送用ヘリコプター部隊の配備の計画もあり、隊員は合わせて700人規模に膨らむ可能性がある。また、陸自は宮古島や奄美大島にも警備部隊やミサイル部隊を配備する計画で、与那国島ではすでに沿岸監視部隊の駐屯地建設に着手。南西諸島で約2千人を新たに配備するという大軍拡だ。

 空の増強もされた。空自那覇基地で第9航空団を新編成。F15戦闘機20機を追加配備し計40機体制に強化。隊員も約300人増やし、1500人体制になった。

 だが、こんな危険な南西諸島大軍拡はシナリオ通りには進まない。すでに、石垣島の陸自基地候補地周辺の3地区が同候補地への配備計画に3区共同で反対し、抗議することを決めた。

 辺野古新基地阻止の闘いを軸に沖縄・南西諸島自衛隊大増強に反対する闘いは、今重要さを増している。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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