2016年02月19日発行 1416号

【医療問題研究会医師招き学習会/帰還強要・棄民政策に怒りを共有/東京・立川/日本の放射線防護は国際常識を逸脱=^「100ミリシーベルト以下なら安全」に反論を】

 原発事故被害をなきものにしようと、国と福島県は避難支援打ち切り・帰還強要を推し進めている。2月7日東京・立川市内で、「放射能健康被害と帰れない原発避難者」をテーマに医療問題研究会の入江紀夫さんを招いて学習会が開かれた。

現実を直視すべき

 「月桃の花」歌舞団と放射能健康診断100万人署名三多摩の会が共催し、約40人が参加した。

 入江さんは、土壌汚染と患者数を対比した地域ごとのデータを示し、「将来発症するものを早く発見しているなら偏差は起こらない。スクリーニング説は成り立たない」と指摘。妊娠中にX線治療を受けた子どもの発がんリスクや、原発からの距離と患者数の連関など諸外国の研究成果を紹介し、「被曝量が10mSv増すごとにリスクは3%高くなる、という信頼できる研究がある。放射線専門家なら100m以下は被害がないとする閾値(しきいち)説は言わない」と述べた。

 出産直前直後の死亡率や形態異常の増加を示す数字を挙げ、「まず現実を直視しなければ研究も対策もない。安全な地域生活の再建、健康障害の補償・予防に国と東電は全責任を負っている」と締めくくった。

沖縄の基地と同じ

 参加者から切実な質問が出される。茨城県の公立中学の教員は「スキー授業が群馬から福島に変わった。100m以下なら安全、という放射能副読本を使って教育させられる。きょう聞いた数字を使って反論して大丈夫ですか」。入江さんは「入江では信じてもらえないかもしれないが」と笑わせつつ、「日本の放射線防護は国際常識を逸脱している。自然放射線の高い地域でも健康被害は増えている。国際的研究成果と言ってもらって結構です」と励ました。

 避難者からも怒りの声が相次ぐ。

 都営住宅などに避難する人たちでつくるキビタキの会の女性は「これまでは原発安全神話、今は放射能安全神話。100ベクレル以下なら安全で101ベクレルなら生産者に補償なんて誰が信じられるか。除染袋は野積みされ、開いた穴をテープでふさいでいる。人間の暮らしは考えない。沖縄の基地問題と全く同じ」と帰還政策のまやかしを批判。

 南相馬市から避難した女性は声を潤ませながら、「小さな子を持つ福島のお母さんと話をすると、私の方が汚染の数字を知っている。食のこと、鼻血のこと…子ども一人ひとりが心配。今日はとても勉強になりました」。

 いわき市から避難している男性は「来年帰らざるを得なくなった。子どもでも安全なんだから高齢者はなおさら大丈夫と言われる。汚染された食べ物、飲み物にはどうしても抵抗がある。詳細なデータに基づいた情報が聞けてよかった」と胸の内を明かす。

健診署名も

 入江さんは「健康被害が隠ぺいされていることが根本的問題。起きていることを伝えることが大事です」と避難者支援の方向を示した。

 放射能健診署名の推進や避難者支援の強化などの取り組みも提起された。フィナーレは、福島と沖縄をつなぐミュージカル『ガマ人間あらわる』の連続公演(4月9日・立川など)を準備している歌舞団による『ダイレクト』のコーラス。「わたしの命は/わたしのものだ」の歌声に大きな手拍子が起こった。



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