2016年02月26日発行 1417号

【厚顔無恥の安倍暴走/国会答弁でまたも9条改憲/憲法破壊は許されない】

 安倍首相の暴走が止まらない。立憲主義を理解しない安倍は、民意を一切顧みず「9条改憲」を持ち出した。憲法そのものを踏みにじる安倍は即刻退場させねばならない。

 安倍は2月3日の衆院予算委員会で、またも憲法破壊を公言した。最近は「緊急事態条項」創設を主張していたが、今度は憲法第9条2項を変えるという。いわく「7割の憲法学者が自衛隊に憲法違反の疑いを持っている状況をなくすべきだとの考え方もある」。また、国防軍創設を盛り込んだ自民党改憲草案(以下、草案)について「自衛権を明記し、新たに自衛のための組織設置を規定するなど、将来あるべき憲法の姿を示している」とも述べた。

 翌2月4日には、改憲について「参院選でも訴えていきたい」としたうえで「自民党の憲法改正草案がある。すでに衆院2回、参院1回、このことも掲げながら選挙を戦い、大勝を得た」とうそぶいた。

現実を憲法に合わせよ

 「7割の憲法学者の…」は全くの暴論だ。憲法は、国の在り方を定めたものだ。現に自衛隊が存在するのだから、憲法を現実に合わせる≠ニいうのは全く逆で、現実を憲法に合わせなければならない。

 憲法第9条第1項は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とし、同条第2項は「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とする。

 歴代の内閣は、自衛隊を憲法が保持しない≠ニ定めた戦力≠ナはなく、「最低限度の実力」とごまかし自衛隊を強化してきた。安倍はその見解すら否定し、第9条第2項の「改憲」で自衛隊を合憲化しなければならないという。裏を返せば、現在の自衛隊は現行憲法に反する存在であると認めたことに等しい。ならば、違憲の自衛隊を廃止するしか選択肢はない。

 また、第9条第2項は前項の目的を達するために$力不保持と交戦権の否定を定めた。第1項を順守することを保障するための規定だ。だから第2項の「改憲」は、第1項を「守らない」と宣言するも同義だ。安倍がやろうとしていることは「国際紛争を解決する手段として武力による威嚇と武力行使を用い、そのために、戦力を持ち交戦権を行使する」ことだ。

 憲法の3本柱である「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」のうちの「平和主義」を破壊する行為だ。

殺し殺される国家改造

 安倍改憲は、「平和主義」の破壊だけではない。

 安倍は昨年11月、国会答弁で「緊急時に国家や国民がどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどう位置づけるかは極めて重要で大切な課題だ」と述べた。また、年明け以降、「改憲の端緒は緊急事態条項から」との声が改憲勢力からたびたび発せられている。国民に東日本大震災やパリでのテロ事件を想起させることで内閣への権力集中を実現しようとの企てだ。

 草案は、緊急事態条項を新設する。その内容は「内閣の一存で法律と同等の効果を持つ政令を制定し、財政出動ができる」というものだ。

 天皇主権の大日本帝国憲法下では天皇の大権として「緊急勅令」「財政勅令」「非常大権」が定められていたが、建て前であれその行使は帝国議会閉会中に限られていた。

 だが、草案が定める緊急事態下での内閣の政令制定権や財政出動権に、一切制約はない。議会制民主主義すら否定するものであり、議会と内閣の相互監視によって一方の暴走を止めることを予定した三権分立の否定でもある。天皇主権下の天皇をはるかに上回る権力の集中であり、国民主権の否定だ。

 また草案は「緊急事態」の際に「基本的人権は、最大限尊重されなければならない」とする。内閣が考える「緊急事態」への対処の必要性に照らして「最大限」ということであり、内閣の勝手な判断で制限することが可能だ。基本的人権は権力者との関係において決して侵してはならないものであり、草案はその不可侵性を否定する。

 安倍が画策する「改憲」は、第9条第2項を「改正」することによって平和主義を否定し、緊急事態条項創設で国民主権と基本的人権の尊重を否定する。現行憲法の根幹を根っこから断ち切る行為は、もはや改憲どころではない。新憲法制定だ。憲法第99条が定める国務大臣・国会議員の憲法尊重擁護義務違反であり、憲法制定権力を国民とした近代憲法を否定し市民革命以前に歴史を引き戻すものだ。

 そのうえ安倍は、さも「憲法改正」を掲げて衆院選や参院選で「大勝」したかのように言う。だが改憲は数ある公約の最後にわずかに触れられていたにすぎず、選挙戦ではもっぱら「アベノミクス」のみを前面に押し出していた。しかもその「大勝」は小選挙区制のマジックにすぎない。「勝てば官軍」とばかりに嘘八百を言い散らしているのだ。

戦争法廃止、安倍退場へ

 集団的自衛権行使容認の閣議決定に始まり、憲法違反の戦争法「成立」を強行した安倍のもくろみは、対テロ戦争の多国間軍事同盟内の中心的存在としてグローバル資本のための戦争を遂行することにある。貧困拡大の新自由主義をおしすすめ1%≠フ利益を守るため、命よりカネ≠ニばかりに日本を殺し殺される国とする国家改造だ。

 その安倍の戦争法の前に立ちはだかるのは、平和と民主主義の実現を掲げ国会を幾度となく包囲し全国に広がった圧倒的な反対運動だ。

 安倍がことさらに改憲発言を繰り返すのは、なお幻想を抱かせる「アベノミクス」のメッキが完全にはがれないうちに、おおさか維新の会をはじめとする改憲勢力を取り込み、改憲発議にこぎつけようとする焦りの表れだ。

 戦争法廃止2000万人署名、辺野古新基地建設阻止の運動を拡大・強化すれば、安倍を退場させ戦争法廃止・護憲の連合政府を打ち立てることは可能だ。

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