2016年03月04日発行 1418号

【みるよむ(388) 2016年2月20日配信 イラク平和テレビ局in Japan 政府は労働者・年金生活者の声を聞け】

 2015年12月、サナテレビはバグダッドの街頭で、アバディ政権が労働者や年金生活者への賃金、給付金を削減することについて市民の意見を聞いた。

 インタビュアーのサジャド・サリームさんが、政府が赤字予算の埋め合わせのために賃金が月50万ディナール(約5万円)の公的部門労働者の賃金を3%削減してきたと水を向けると、市民が次々に発言する。

 市民活動家は「国会議員の報酬は年間1億ディナール(約1千万円)で、国会議員やその上に大臣らが得ている必要のない財政分配を取り上げることができたら、月350億ディナール(約35億円)になります」と指摘する。これだけの資金をまともに使えば、国民の生活や社会サービスを少しは改善できるはずだ。

 賃金や年金のカットに「ショックですね」と嘆く労働者は「政府が緊縮政策の背後にあるとする石油価格の問題は言い訳にすぎません」と述べる。確かに現在は国際的に石油価格は下落しているが、価格が高くイラクが石油を大増産しているときでも、教育や福祉や医療、水道、電気などの社会サービスはどんどん切り捨てられてきた。

腐敗政権を援助

 賃金引き下げの大きな原因の一つは、イラクがすさまじい汚職国家であることだ。労働者は「イラクでは、石油パイプから出てくるお金が汚職のポケットに流れ込んでいる」と批判する。

 もう一人の労働者は、首相と政府に対して「イラクの国民を守れ」と要求する。イラクでは最低限の生活に必要な収入は月50万ディナール(約5万円)と言われている。年金生活者では毎月の給付額は30〜40万ディナール(約3〜4万円)。それがさらに削減される。怒り出すのは当然だ。

 ドイツのNGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」の2015年版「汚職番付」でイラクは167か国中の161位である。こんな腐敗した政権に日本政府はのべ数千億円のODA(政府開発援助)を与えている。また、IMF(国際通貨基金)などの資金貸与で借金漬けにして賃下げや人員削減を押し付けているのがグローバル資本主義各国だ。

 サナテレビは、経済危機の犠牲を労働者に押し付ける腐敗政府と闘おうと呼びかける。このイラク市民・労働者と連帯しよう。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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