2016年03月11日発行 1419号

【未来への責任(195)強制労働問題は終わっていない】

 2月26日、「朝鮮人強制労働被害者補償立法をめざす日韓共同行動」主催による「強制労働問題は終わっていない 今こそ解決を!」が東京都内で開催された。韓国からも、張完翼(チャンワニク)弁護士と「勤労挺身隊ハルモニと共にする会」常任代表の李國彦(イクゴン)常任代表がパネリストとして参加した。

 この場には国会議員3名がかけつけたほか、5名の現・元議員からメッセージが寄せられた。参議院選挙前で議員の配慮があるとは言え、昨年12月28日の日韓両政府による慰安婦問題「合意」以来、戦後処理問題が改憲路線を突き進む安倍政権との対決上重要な政治課題となっていることの反映だ。

 この集会は、「12・28合意」によって戦後補償問題そのものが「終わった」かのような日本国内での報道、世論誘導が横行する中、強制労働問題はじめ戦後補償問題は「終わっていない」ことを訴えることを目的に企画された。

 しかし、討論の焦点になったのは「12・28合意」自体をどう評価し、われわれはどう行動するかであった。日米韓それぞれの思惑、東アジアの安全保障や経済関係等、複雑な要素がからみ、日本においても韓国においても評価をめぐって未だ議論が進行中であるというのが、パネリストの報告を聞いた私の感想だ。

 国連女性差別撤廃委員会から帰国したばかりの「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」共同代表の渡辺美奈さんは「合意文書もなく、日韓両国の説明の英文も食い違っており、国際基準を満たさない『合意』だ。被害者にも説明できない。委員からの質問に対して日本政府代表は『強制性がなかった』と一方的な主張を繰り返すだけ。これでは日本政府に対する国際的な不信がさらに広がる」と指摘した。韓国では盧武鉉(ノムヒョン)政権が手掛けた過去史清算事業が朴槿恵(パククネ)現政権下で終了に追い込まれ、具体的解決の展望が描けない厳しい状況がある。しかし、渡辺さんも強調していたが、「被害者が受け入れられない『合意』は解決にはならない」という立場である事実は、われわれの共通の確信だ。

 興味深かったのは、東京新聞編集委員の五味洋治さんの指摘だった。「世論調査を見ると韓国では若い人ほど今回の合意に批判的だ。このことは、今回の『合意』が一過性のものではなく、将来に続く問題となりうることを示している」と。若い世代は日本に対する関心も高いからこそ、真の友好を求めているとも言える。被害者の闘いが大きく政治を動かしている今こそ、被害者が納得いく解決に向けて、私たちも国際的な協同を広げていかなければならない。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 山本直好)

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