2016年03月11日発行 1419号

【丸川環境相、除染で大暴言/「1ミリシーベルト根拠なし」は政府の本音/被害者も汚染もなかったことに】

 「被曝線量1_シーベルトには何の根拠もない」「反原発派がワーワー騒いだから」。丸川珠代環境相が2月、長野県松本市での講演で行った発言は決して「失言」ではない。被害者も汚染もなかったことにし、グローバル資本のため「命よりカネ」の「復興」だけを推し進めたい政府の本音だ。

辺野古も五輪も除染も

 大部分が居住制限区域となった飯舘(いいたて)村で、国直轄の除染事業(環境省発注)を受注しているのは大成建設だ。除染事業が始まった2012年度に大成・熊谷・東急JV(共同企業体)の一角として事業参加。以後、JVを構成する他のゼネコンが入れ替わる中、大成だけは入れ替わることなく受注を続けている。

 大成建設といえば、安倍政権が警視庁機動隊を導入してまで強行する沖縄・辺野古新基地工事を行っていることでも知られる。税金の無駄遣いに批判が殺到、当初計画が撤回に追い込まれた新国立競技場建設でも、他のゼネコンが提案した案のほうが有利と見られていたにもかかわらず、土壇場でひっくり返して受注に成功した。

 菅義偉(すがよしひで)官房長官の息子は大成建設の社員だ。安倍政権に食い込み、どんなに国民の反対が強くても、難しい案件でも受注する。99%の不幸を踏み台にして、大成建設はやりたい放題だ。

1_シーベルトは福島の要求

 「『反放射能派』と言うと変ですが、どれだけ下げても心配だと言う人は世の中にいる。そういう人たちが騒いだ中で、何の科学的根拠もなく、時の環境大臣が決めた」。丸川環境相は2月7日、福島第一原発事故を受けた除染の基準(年間被ばく量を1_シーベルト)についてこう語った。

 では、丸川発言に出てくる「時の環境大臣」はどう答えたか。2月10日の衆院予算委員会で質問に立った細野豪志元環境相(民主)は、1_シーベルトは環境省内での議論、また福島県民との相談の上で決めたと反論した。実際、当時の福島県内の自治体首長らが1_シーベルトを基準に除染を行うよう要請した事実がある。事故に何の責任もない福島県民には事故前の福島に戻すよう要求する権利がある。1_シーベルトは福島の要求なのだ。

 「除染は効果がなく税金の無駄。むしろ避難の権利を」という主張も根強いが、避難せず福島で暮らしたい県民も大勢いることを考えると、県民の健康を守るために必要な除染にはきちんと予算・人員を割かなければならない。だが政府は除染費用が無限に拡大することを恐れ、最も県民が望んでいる森林除染は早々とやらない方針を決めた。

県の面積の71%が森林である福島県で、森林を除染の対象にせずに効果が出るわけがない。実際、多くの福島県民が「自宅周辺だけ除染をしても、雨が降ったり風が吹くたびに森林から放射性物質が運ばれ、すぐに線量が元に戻ってしまう」と指摘している。

 その上、国は、自宅周辺や生活空間の除染を県民が自ら行っているのを見てそのまま放置した。除染作業では砂ぼこりが舞い上がり、内部被曝など二次被害の危険がある。厚労省は2011年、除染労働者の放射線障害防止のためのガイドラインを制定、個人線量計による被曝線量管理やマスク着用などの防護策を定めたが、同じ作業を住民が防護策も取らずに行っていても放置している。

 そもそも、人の住んでいない居住制限区域の除染を防護策を講じた専門業者が行っているのに、住宅地は危険を伴う住民の自主的な除染に任せるというのはあべこべだ。本来なら住民のいる地域こそ、国が専門業者による直轄除染を行い、住民の健康を守るべきなのだ。国がそうしないのは、できるだけ除染にカネをかけず、避難者を帰還させたいと考えているからだ。

 事実、国は除染の基準を1_シーベルトから引き上げようと策動している。線量の基準をモニタリングポストの数値から個人線量計の数値に変更したのもその一環だ。できるだけ線量の低く出るものを基準とすることによって除染対象を狭め、福島にかけるカネを安く済ませる。これも安倍政権による棄民政策だ。「除染の基準が厳しすぎるせいで、帰れるはずの所にいまだに帰れない人がいる」という丸川環境相の発言は政府の本音を語ったものなのだ。

県民は納得せず

 しかし、このような棄民政策の一環としての除染のあり方に福島県民は当然、納得していない。不満を抑えることが困難と見た福島県は、今年1月、畠利行副知事を環境省に派遣。丸川環境相に森林除染を行うよう要請した。丸川環境相は「森林は暮らしの一部であるという思いを受け止め、これからも取り組んでいきたい」と述べたが、そのわずか1か月後に大暴言を吐く始末。丸川環境相および安倍政権にその気がないことは明らかだ。

 命よりカネ、グローバル資本の儲け本位の「復興」から、命と健康を守る真の復興に根本的に転換させるため、安倍政権を今すぐ倒さなければならない。



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