2016年03月18日発行 1420号

【みるよむ(390)2016年3月5日配信 イラク平和テレビ局in Japan 政府は労働災害を補償しろ―建設労働者の怒り】

 2015年12月、サナテレビはバグダッドで建設労働者にインタビューした。

 イラク戦争から13年を経たバグダッド。少なくとも近代都市としての町並みは整備されている。その街づくりを担っているのが建設労働者だ。サナテレビは街で働く建設労働者たちに話を聞いていく。

労災でも給付なし

 1人目の労働者は「高い建物から落下したり、けがをしたりして自宅で療養していても、何も払ってくれません」と訴える。契約業者や現場監督がせいぜい2、3日分の日当を払うだけだ。労働組合もない。

 2人目の労働者も深刻な実態を訴える。まずは仕事がとても減っている。「今は仕事がない。失業者に対する社会保障もない」という状態である。この労働者は現場でけがをしたが、現場監督は病院に連れて行っただけでそれ以上は何もしなかったと言う。労働組合も何もしなかった。

 他の労働者も、組合はあっても賃金や労働条件など労働者が本当に困る問題が起きても助けにならないことに怒りをぶつける。

きわめて低い賃金

 労働災害で背中を痛めている労働者は、生活のために仕事を続けている。3人の子どもたちの生活がかかっているからだ。ところが、建設労働者の賃金は日当で2万ディナール〜2万5千ディナール(約2千円〜2500円)。時給にすれば250円〜300円にすぎない。物価は上がり続けているのに賃金はこれほど低い。そして社会保険はまったくない。

 イラク政府は、石油価格の下落を口実に緊縮政策を労働者に押し付けている。しかし、人口が日本の3分の1足らずのイラクの国家予算規模は10兆円以上だ。グローバル資本の金儲けのために使われている予算を社会保障制度に投入すれば、労働者・市民の生活を向上させることは十分に可能である。

 今、イラクでは賃金不払いがまかりとおり、労働者の生活と安全、健康が踏みにじられている。この状態に対し、さまざまな分野の労働者が全国で抗議デモを展開している。サナテレビは労働者に、政府と闘い、労働組合を作ろうと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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