2016年03月25日発行 1421号

【みるよむ(391) 2016年3月12日配信 イラク平和テレビ局in Japan 商店主たちの怒り―バグダッドの市場から】

 イラクでは、石油価格の暴落と政府の緊縮政策の下で経済危機が続いている。2016年2月、サナテレビはバグダッドの市場を訪問して店主たちにインタビューし、経済危機が市民生活にどんな影響を与えているかを明らかにしている。

 バグダッドはイラク最大約600万人の人口を抱える都市である。市場には連日大勢の人たちが買い物にやって来る。映像は魚屋が魚をさばき、肉屋が店頭に肉をつるして販売している様子を映し出す。一見普通の活気ある市場である。

 しかし、商店主たちの顔はさえない。売り上げが大幅に落ち込んでいるのだ。石油価格の下落を口実に、アバディ政権は緊縮政策を押しつけている。半年も1年も賃金が支払われなかったり、何十パーセントもの賃金カットを受ける労働者が続出している。

 魚屋の店主は「(緊縮政策のせいで)売り上げが85パーセントも落ちた」と語る。家賃や店員の賃金は同じだけ払わなければならず、これでは毎日、損が出てしまう。

 肉屋の店主も緊縮政策の影響の深刻さを訴える。労働者の賃金は以前は月100万ディナール(約10万2千円)であったのが現在は80万ディナール(約8万1千円)程度と言う。20パーセントも賃下げされたら、商品を買わなくなるのは当然だろう。

 労働者は「1週間に平均で6〜10キロの肉を買っていたが、今日では1・5キロしか買わない」という状態になっている。さらには、肉を買うのにも「分割払いで買いたい」と頼んでくる。

「客は一人もいない」

 ある商店主の言葉が印象的だ。「市場は凍り付いたようになっています。今、午後1時になりましたが、まだお客は一人も来ていません」

 イラクでは、今や労働者が食料品などの生活必需品でさえ買うのにも困っている状況だ。まさに市民、労働者の生活破壊が急速に進んでいる。

 日本の安倍政権は、市民の生活困窮問題や街頭インタビューで批判的な声を取り上げないよう圧力をかけている。イラクでも主要メディアが市民の窮状をまともに取り上げることはない。そうした状況で、サナテレビはグローバル資本と政府による国民生活破壊の実態を明らかにしている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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