2016年03月25日発行 1421号

【沖縄・辺野古 和解直後に国の強権的「是正指示」 知事「あらゆる手法で阻止」と明言】

自ら「解決」ぶち壊す国

 融和ムード≠演出した3月4日電撃和解発表から一転、国側は再び強権的態度で臨んできた。石井啓一国交相は和解成立からわずか3日後の3月7日、翁長雄志(おながたけし)知事の辺野古埋め立て承認取り消し処分の「是正」を指示する文書を県に発送した。

 県と国が合意した代執行訴訟の和解条項では、国側が是正指示を行うと示されていたが、「円満解決」に向け県と協議をするよう定めていた。間髪入れず是正指示を出したことに、翁長知事は「(安倍首相は)誠意をもって沖縄県と協議をしたいと言った。いい方向に結論を出そうという中で、入り口でこういった形でやるのは大変残念だ」と批判。和解直後の会談で安倍晋三首相は「誠意を持って沖縄県側と協議を続け円満解決に向けて話し合いを続けていきたい」と語っていたが、自ら口にした誠意≠燗鰍ー捨てた。言っていることとやっていることがアベコベで、強権的手段にしか訴えられないのは、いかにも安倍らしい。

 国の姿勢に沖縄県民は「強引すぎる」と怒りと不信感を募らせている。県や弁護団も「(是正指示は)想定内」と冷静に受け止める一方、「国は協議をする気があるのだろうか」と誠実さに欠ける国の態度に不快感を示した。

 裁判所からの和解勧告文には「本来あるべき姿としては、沖縄を含めオールジャパンで最善の解決策を合意して米国に協力を求めるべき」と県・国の双方で解決策の合意を模索するよう明記していた。

 国は協議の段取りさえ整えることなく是正指示を出した。辺野古新基地建設を強行する姿勢は一層鮮明となった。安倍首相が和解当日になお「辺野古が唯一の解決策」と述べた通りだ。是正指示を急げば裁判の早期終結に結びつき、その分判決も早くなる。今度こそは絶対に勝てる、とたかをくくっている。3月7日、中谷元・防衛相はシアー米国防次官補との会談で辺野古移設が唯一の解決策とあらためて「確認」した。国側の協議とは名ばかりで、誠意を持って県側と向きあうつもりなど微塵もないのである。

 県は、国土交通相からの是正指示文書を受け、14日にも国地方係争処理委員会へ不服審査を申し出る書面を提出する。審理開始から90日以内に判断すると定められており、遅くとも6月中旬には係争委の結論が出され、不服の場合新たな訴訟となる。

知事は不退転の決意

 3月8日の沖縄県議会本会議では、今回の和解成立の報告と質疑が行われ、翁長知事は改めて不退転の決意を示した。質疑で仮に県が敗訴した場合には辺野古移設に協力するのか問われ、知事は「今回の和解案は2件(代執行訴訟と県による国の関与取消訴訟)についての和解」であり、「裁判所の判決には従うと話したが、今後設計変更などいろいろあるが法令に従い適正に判断する」と明言。「今日までの姿勢(新基地反対)をもちつつ対処していきたい」と述べた。

 つまり、たとえ新たな訴訟で敗訴しても、埋め立て承認後に生じた事由を根拠に行う「撤回」、大規模な埋め立て工事に必要な「設計概要の変更申請」を不承認とするなど、知事権限を行使し、新基地建設阻止を貫く構えを表明したのである。

 知事権限を行使する考えを示したことに対し、菅義偉(すがよしひで)官房長官は会見で「和解条項に従うべきだ」とけん制した。協議すら開かず即座に是正指示を出し自ら信頼を踏みにじった国側に、そのような発言をする資格はない。

現場作業はすべて中止

 辺野古現地では、和解成立の4日午後に工事中止の指示が出された後、ボーリング調査未完了1か所があるものの、現場の作業はすべて止まった。

 キャンプ・シュワブゲート前で座り込む市民は、工事中止後も連日行動を続けている。機動隊による強制排除もなく、工事中断を実感する市民らの表情は明るい。ゲート前では、今後も沖縄防衛局が陸上工事を中止するか様子を見ながら早朝抗議活動の継続を検討したいとしている。

 沖縄県の安慶田(あげだ)光男副知事は10日、首相官邸で菅官房長官と会談し和解条項に基づく協議を3月中に始めることを決めた。下旬には中谷防衛相が来沖し翁長知事との会談も行われる。国が「辺野古が唯一の選択肢」と固執し続ける限り、何ら問題は解決せず県民の反発は強まる一方だ。

 今後、県は国との協議の中で、頑なに辺野古に固執する国の姿勢を突き崩していく。和解と工事中止に確信を深めたオール沖縄の民意と運動が、県―知事をさらに後押しすることは間違いない。 (A)

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