2016年05月06日・13日発行 1427号

【戦争準備進める安倍/新基地も兵器もいらない/「辺野古移設は唯一の解決策」ではない/解決どころか負担増と侵略拠点化】

 沖縄・普天間基地返還合意(1996年)から20年を迎えた4月12日、政府と沖縄県は全く逆のコメントを発した。

 菅義偉(すがよしひで)官房長官は「辺野古移設に必要な埋め立て承認に何ら瑕疵(かし)(欠陥)はない。行政判断はすでに示されているとの考えに変わりはない」と開き直り、岸田文雄外務大臣は「辺野古への移設が唯一の解決策だ」と述べた。沖縄側は稲嶺進名護市長が「普天間が1ミリも動かなかったのは、日米が合意した県内移設は県民に受け入れられないでたらめな計画だからだ」と県民集会で批判した。

 そもそもの発端は、95年に米兵3人が引き起こした少女集団暴行事件だ。この事件を契機に在沖米軍によるたび重なる事件事故に苦しめられてきた沖縄県民の怒りが一気に噴出し、沖縄本島、宮古、八重山で抗議の総決起大会が開かれた。県民の闘いを目の当たりにした日米両政府は、96年末、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)の最終報告をまとめ、在沖米軍基地の整理縮小を決めた。

 だが、宜野湾市街地のど真ん中にあり、「世界で一番危険な基地」と言われる海兵隊普天間基地の返還については、名護市東海岸・辺野古沖に「海上ヘリポート」を代替施設とすることで合意した。その結論への名護市民の答えは「名護市における米軍のヘリポート基地建設の是非を問う市民投票」での反対の意思表明だった。以来、沖縄の民意は常に新基地建設反対だった。4月12日の名護市長の発言どおりだ。

 一方、政府の「唯一の解決策」との主張には全く説得力がない。

 20年前のSACO合意に至る過程では、普天間基地に関して3つの具体的代替案が検討されている。最終案の採用理由は「沖縄県民の安全及び生活の質にも配意する」というもの。だが騒音の影響、危険性、根強い反対運動などの理由から、建設場所や規模・形状が二転三転した。果ては軍港まで備えた巨大基地になる計画も飛び出した。工法は、漁場を壊し環境負荷も大きい埋め立てとなった。

 SACOの選択理由は全くの嘘っぱちだった。

 米国はこの20年の間に、湾岸戦争・アフガニスタン戦争・イラク戦争と中東への3つの侵略戦争を仕掛け膨れ上がった軍事費で財政赤字がいっそう深刻化し、国民の厭戦(えんせん)感情とあいまって、米政府は海外基地の整理縮小を余儀なくされている。

 また、現在の戦争はハイテク兵器で「敵国」の軍事的・政治的中枢を徹底破壊した後で、陸上部隊が侵攻するものだ。敵地に殴り込むしか芸がない海兵隊は、米国内では無用論まで出ている。そのため、沖縄の海兵隊の主力は、海軍・空軍とともにグアムへと移転する計画が進行中だ。粘り強い沖縄県の働きかけもあり、米国の2016年度国防予算の大枠を定める国防権限法からは、「辺野古移設が唯一の選択肢」との文言は削除された。米大統領選挙の共和党候補指名を争うドナルド・トランプは「在韓米軍・在日米軍を撤退させる」とまで言い放っている。また、森本敏(さとし)元防衛大臣など政府サイドの専門家≠ゥらでさえ、兵員輸送力の向上などを理由に「軍事的には沖縄である必要はない」とまで言われてきた。

 では、なぜ日本政府は辺野古新基地建設を強行しようとしているのか。

 戦争法を施行した安倍は、実際に発動できる軍事体制を欲している。だから、海兵隊が沖縄に駐留しているうちに「沖縄の負担軽減」を口実として巨大基地を建設し、海兵隊移転後は自衛隊版海兵隊を配備することに本当の目がある。それは、アジア太平洋戦争で天皇の軍隊が踏みにじった沖縄の地を、グローバル資本の軍隊としての自衛隊出撃拠点にすることを意味する。沖縄の闘いは今、新基地のこの狙いを見抜きノーを突きつけている。

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