2016年05月06日・13日発行 1427号

【参院選のために増税延期? 消費税の廃止は可能だ 大企業・富裕層への優遇は28兆円】

消費税増税でゆらぐ安倍

 消費税8%への引き上げ6か月後の2014年10月、安倍首相は引き上げの経済への影響について「ワンショット(1回だけ)」と強弁した。だが、増税による不況が続く現実を前に3月、「予想以上に落ち込んだのは事実で、予想以上に長引いているのも事実」と認めざるを得なかった。

 この事実は政府の統計資料からも明らかとなる。景気の現状を把握する指標に景気動向指数があり、4月6日内閣府が発表した直近の指数は、景気が10か月連続で足踏みしていることを示している。

 その深刻さのため10%への消費税増税の実施時期をめぐって安倍政権が揺れている。安倍自身の発言も延期を否定するものではなくなってきた。8%への引き上げの際、安倍政権は一度延期している。その「決定」を掲げて衆院選に臨み、勝利した。7月の参院選に勝つために、前回と同じ手法を使うこともありうる。その布石として3月から国際金融経済分析会合を開き、ノーベル経済学受賞者らに引き上げ反対を言わせている。

 だが、問題は実施時期ではない。消費税そのものが問われなければならない。消費税は何のために導入され、導入で何が起き、代わる財源がなぜ議論されないのか。改めて検討したい。

「社会保障のため」のウソ

 消費税導入の主な理由の一つに、「社会保障制度充実のため」があった。増税のたびにこの理由が強調され、10%への引き上げを定めた「社会保障と税の一体改革」で増収分は全額社会保障のために使う≠ニ歴代の政権は宣伝してきた。消費税収を社会保障に充てるとしても、これまで社会保障に充てられてきた他の税収が社会保障以外に使われれば全くのうそであり、過去もそうされてきた。

 今回の政府の説明を見よう。

 10%への引き上げ増収分14兆円のうち基礎年金の安定化に3・2兆円、子育て支援・医療・介護・公的年金の充実に2・8兆円、計6兆円を使うとしている。残りの8兆円はどこに行ったのか。「安定的な制度を構築するため、将来世代につけ回す借金を軽減」として7・3兆円を使う。これは、累積する政府の財政赤字埋め合わせだ。つまり、政府の借金返済というもう一つの理由があり、「社会保障のため」は建前でしかない。

 待機児童問題や年金など国民生活を維持安定させる社会保障には、税による再配分が不可欠だ。そのためには課税が公正かつ公平でなければならない。ところが、消費税は逆進性が強く、低所得者を直撃する不公平な税だ。この矛盾を抱えた消費税を社会保障のための財源とすること自体を見直すべきなのだ。

不公平税制是正で財源確保

 では、消費税に代わるものがあるのだろうか。ある。

 ソフトバンクは2013年3月期に約789億円の純利益を上げた。納税額を見ると、たった500万円しかない。0・006%という微々たる課税率だ(表)。他のグローバル資本も超低額の税金しか納めていない。グローバル資本に有利な税制のためだ。

 その一つに受取配当金の課税除外がある。他社の株式保有で生じた配当金は課税除外にできるもので、子会社や関連会社分は100%、海外子会社分は95%、それ以外の分は50%とされ(2015年度税制改正により一部変更あり)、資本金10億円以上の大企業が課税除外分全体の約90%を占める。この制度を廃止するだけで、2011年度で約4兆円の財源が生まれる試算がある。

 他にも、各種の引当金・準備金や研究開発減税などグローバル資本のための優遇税制が多数ある。それでも飽き足りない強欲なグローバル資本は、パナマ文書が暴くようにタックスヘイブンで税逃れに奔走(ほんそう)し、法人税を下げなければ国際競争に勝てないと脅して政府に減税を迫っている。マスコミも、優遇税制があることさえ伝えない。

 不公平税制は648項目もあり、それらをすべて廃止すると約28兆円の財源をつくることができる。優遇税制の恩恵を独り占めしているグローバル資本と富裕層に対して現行の税制を改善するだけで問題は解決する。

 適正な課税があれば、増税不要どころか消費税そのものの廃止が可能となるのである。
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