2016年05月06日・13日発行 1427号

【熊本大震災 被害深刻化は人員削減での人災 安倍政治の破綻を物語る 改憲への誘導を許すな】

 熊本大地震は、犠牲者48人、震災関連死11人、避難者9万人(4/22現在)と甚大な被害をもたらしている。また、被災者が必要とする救援物資が届かないことが連日報道されている。「5時間たっても荷下ろしができない」「東日本大震災の教訓生かされず」―。自ら招いたといえる事態に、安倍政権は場当たり的なパフォーマンスとアリバイ作りで被害を深刻化し、はては地震を口実に改憲を誘導するなどその悪質さは際立っている。

 安倍首相は「(物資が)被災者に届かないと意味がない」とぶち上げ、一方的に市町村へ送り届ける「プッシュ型」で90万食を発送。しかし、実際にどれだけ被災者の手元に届いたかは発表されない。報道によると、熊本県も政府の発送状況が不明のため県の発送分と重複する、必要なところへ届かない、衛生用品の要望のあるところへ食料しか届かないなど、安倍のスタンドプレーでかえって被災地の必要な物資が届かない混乱に拍車をかけている。

人手不足は職員削減のため

 個別の事情や連携の問題はある。だが、こうした深刻な事態が一向に改善されない根本問題はどこにあるのか。それは、避難した被災者のニーズをつかみ搬送体制などをつくれるだけの自治体の人員が全く足りないことだ。

 「深刻な人手不足」(4/20産経)、「人手不足が著しく、(被災地からの)物資の要望も止まっている」(4/19西日本)、「人員がとにかく足りない」(益城町)、「市町村ニーズ把握まで手が回らず、県も何が求められているか把握できないでいる」(熊本県)という有り様だ。

 この自治体の人手不足は、政府とそれに応じた当局が推し進めた自治体リストラ・民間委託による人員削減によって生じた。歴代自民党政権が「地方行革」の名で人員削減を押し付けた結果、1994年に328万2千人いた自治体職員は、2015年には273万8千人と約20年間で実に54万4千人も減っている。これは沖縄県を除く中国・四国・九州16の全県市町村職員数(55万7千人、15年)に匹敵するすさまじい削減数だ。熊本県内だけでも、この10年間で約5千人の自治体職員が削減されている。

 これでは、現に昼夜問わず奮闘している被災地の自治体職員に「避難所ごとに今何が必要か、きめ細かな対応」(4/20朝日)を求めることは土台無理なのだ。

減らされた自治体職員数

避難も復興も1人で

 この自治体リストラの影響で、防災部署の人員は抑えられ、災害の避難計画や復興計画作成を一人で担当する自治体が多数になっている。さらに市町村合併により、自治体支所などの統廃合で住民要求の受け皿が極端に減り、行政機能が縮小している。「過去の災害の教訓を活かせ」と指摘をされても、教訓を受け止める体制がなく手が回らないのが実情と言ってよい。

 「物資が行き届かない」「自治体の指定した避難所が耐震性能に問題がある」という事態の続発。それらの結果としての「エコノミークラス症候群の疑い中越沖地震の7倍」という被害拡大は、こうした自治体リストラ・民営化を進めた政府による、まさに人災≠ネのだ。

 自治体リストラ・民営化をやめ、公務員を増やし、住民要求をくみ上げて被災者の立場にたった避難計画や災害対策、復興対策を行える体制こそ緊急に求められている。

オスプレイも、改憲も

 一方で、安倍政権は、当初「直ちに支援は必要ない」としていた米軍オスプレイ4機の救援物資輸送支援を受け入れ4月18日、災害で初めて2機運用した。しかし、自衛隊は大型輸送ヘリCH47を約70機も保有しており、オスプレイの必要性はない。防衛省が「政治的効果を期待できる」(4/19朝日)としているとおり、戦争国家へオスプレイ導入の正当性を宣伝するために受け入れたものだ。極めて高い墜落事故の可能性や、ホバリング時には200℃にもなる熱風を撒き散らし火災の危険性すらあるオスプレイをあえて被災地に使用した。

 さらに4月16日、菅官房長官が記者会見で、熊本地震をめぐり緊急事態条項を憲法改定で新設することについて「極めて重く大切な課題」と述べた。安倍政権は緊急事態条項は災害対策のように言うが、実際は戦争遂行のための独裁政権を作るものだ。

 「自民党憲法改正草案」では、内閣の一存で法律と同等の効力を有する政令を制定、財政出動でき、全市民が政府の命令に従わねばならないとする。議会制民主主義すら否定するものだ。災害対応ならば、災害対策基本法により首相が緊急災害対策本部を設置して自ら指揮をとり自衛隊・警察等も指揮でき、現行法で十分対応可能なのだ。

 被災者の命と生活を守るのではなく、災害ショックにつけ込み戦争国家への政治的野望に利用する安倍に、この国の政治を任せることはできない。直ちに退陣させよう。

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