2016年05月06日・13日発行 1427号

【西村さん 遺品返還訴訟第5回口頭弁論/もんじゅ延命の構造をただす/夫の人権は踏みにじられた】

 動燃(動力炉・核燃料開発事業団、現日本原子力研究開発機構)職員だった夫、西村成生(しげお)さんの死の真相を突き止めたい、と妻トシ子さんが起こした遺品返還請求訴訟。第5回口頭弁論が4月18日、東京地裁であり、原告本人と被告側証人の尋問が行われた。

 95年12月の高速増殖炉もんじゅナトリウム漏れ事故で、動燃は現場を撮影したビデオを隠ぺいし、批判にさらされる。成生さんはビデオ問題の内部調査に従事。そのさ中の96年1月13日、「ホテル8階から飛び降り自殺」とされる不審死を遂げた。警察は真相解明に不可欠な衣服などの遺品を遺族に返還していない。

 原告本人尋問の冒頭、トシ子さんは「遺品は私にとっては形見。ずさんな捜査のために返ってこず、夫の人権を踏みにじられた。返還により、捜査できるものは捜査にあてたい」と、提訴の目的が成生さんの名誉回復と真実の究明にあることを明確にした。

 被告側の「遺品は原告に引き渡されたか、原告から廃棄の依頼を受けて廃棄した」とする答弁書については、「こんないい加減な書面を出すのかとびっくりした」と強く批判した。「西村さんが『コートは処分してくれ』と言ったのか」の問いには「絶対言っていない」ときっぱり。

 トシ子さんは続けて、成生さんの遺体には30メートルの高さからコンクリート面に落ちたような損傷は見られなかったこと、転落ならできるはずのない擦り傷が多数あったこと、「遺書」には成生さんのものとは思えない表記や誤字・当て字が見られること、死亡時刻を推定するのに最も重要な深部体温(直腸の体温)が測定されていないことなどを詳細に証言。厳守すべき検死の手順さえなおざりにされ、真実が闇の中に葬り去られていると告発した。

 被告側証人は、遺品返還を求めるトシ子さんに応対した元警視庁中央警察署刑事課長代理。「(成生さんの死に)事件性はなかった」「経験則から言って遺留品はすべて返しているはず」と繰り返す。ごまかしだらけの証言に、裁判長もこの日の結審は回避せざるを得ず、事件を直接担当した中央署の元警部補を次回証人調べすることとした(被告側は「入院中で証言不能」と主張)。

 報告集会で大口昭彦弁護士は「西村さんを犠牲者にすることで動燃の問題性があいまいにされ、もんじゅに今も毎日5500万円が費やされている。この構造をただしたいというトシ子さんの志に私たちも応えていく」と述べた。

 次回は6月27日午前11時半から705法廷にて。

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