2016年05月20日発行 1428号

【広がる「野党は共闘」/地域に広く深く展望を/市民の運動が政治を変える】

 全国で開催された今年の憲法集会では、安倍政権の改憲ストップとともに野党共闘実現・勝利への決意が相次いで表明された。4月に行われた北海道5区衆院補選の野党統一候補大健闘が勢いを与えている。野党共闘を求める市民の運動は統一候補実現への原動力であり、選挙に棄権してきた人びとにも政治変革への展望を示すものとなる。

野党共闘が拡大

 「野党は力を合わせて参院選を戦い抜く」(民進党岡田克也代表)―5月3日の憲法集会(東京)には民進、共産、社民、生活の野党4党の党首がそろい、野党共闘への決意をアピールした。4月段階では、改選数1人の32選挙区のうち野党統一候補の合意ができたのは20選挙区だったが、5月に入り残る12の選挙区でも前進している。

 5月3日には福島選挙区で野党合意が実現。岩手では10日に合意される予定だ。これで、東日本の1人区すべてで野党共闘が成立する。西日本でも、12日には愛媛で統一候補の正式発表が予定され、香川でも合意間近だ。他の選挙区でも「市民連合」など市民団体が統一候補を推薦し、政党間合意へと押し上げる動きが出ている。共産党が候補を下ろし、事実上の統一候補となるところも多い。ほぼすべての1人区で自公候補との対決の構図ができつつある。

 今年最初の野党共闘選挙となった北海道5区衆院補選。勝利はできなかったが、野党共闘の効果が確認できる。野党統一候補が獲得した票は12万3517。自民党候補(13万5842票)に1万2千票差に迫った。

 2014年衆院選当時、民主・共産両党の合計は12万6498票だった。一方自民党票は13万1394。前回より投票率が0・8%低下した分を調整すると、数字上は自民党が約6千票増、野党共闘は約1千票減となる。この増減は新党大地が民主支持から自民に鞍替えしたことが大きい。新党大地は、12年の総選挙比例区で35万票を獲得。5区での基礎票を1万票程度と推定すれば、自民は票を減らし、野党共闘は民主・共産の基礎票の上に新たな票を獲得したと言える。

 「共産党と共闘すれば民主党の保守票が逃げる」との憶測は、事実で否定された。野党共闘に背を向ける理由はなくなった。

 共同通信出口調査によれば、無党派層の7割が野党共闘候補に投票した。選挙戦は実質的に市民団体が支えた。戦争法廃止とともに生活破壊の安倍政治への怒りを掘り起こした。野党共闘の効果は、地域の市民運動が作り出している。

怒りと危機感が後押し

 「市民連合」など野党共闘を求める市民団体が各地で結成されている。その背景に安倍政権に対する危機感があることは間違いない。憲法の日を前に実施された世論調査で「憲法守れ」の声が増えているのもその表れだ。

 NHK世論調査(4/15〜4/17)では、第2次安倍政権発足直後の13年、「改正必要」42%、「不要」16%だったものが、今年は「必要」27%、「不要」31%と逆転した。朝日新聞調査(3〜4月)でも、昨年3月の調査と比べ、「不要」が48%から55%に増え、「必要」は43%から37%に減った。共同通信調査(4月末)では、安倍改憲に「反対」が56・5%で「賛成」33・4%を大きく上回った。

 共同通信調査は野党共闘について聞いている。統一候補を出すことについて、「評価する」「どちらかと言えば評価する」を合わせ52・6%。「評価しない」「どちらかといえば評価しない」の合計39・1%を大きく上回った。

 福島で共闘に合意した民進党県連代表玄葉光一郎は、各種世論調査の結果を踏まえ「共産と組まないとかえってマイナスとなる」と方針転換の理由を語っている。安倍政権に対する怒り、市民の闘いが政党の背を押している。

改憲反対候補の勝利を

 参院選勝利をどう切り開くか。

 7年前の09年8月、総選挙で民主党(当時)が小選挙区で自民・公明に勝利し、自民党を政権の座から引きずり下ろした。小泉政権以降の急速な新自由主義政策、規制緩和が生活を破壊し、積年の自民党政治への不満と憤りが投票行動につながった。

 今、生活苦はさらに深刻化し、自公政権に対する怒りは拡大している。ただ、民主党政権への「期待」が裏切られたことが、大きな絶望感をもたらしている。国政選挙の投票率は、14年衆院選で52・66%、参院選ではここ27年間50%台だ。「どうせ変わらない」というあきらめをぬぐい去り、市民が政治を変えられることを示さなければならない。

 共同通信が、6月末に18、19歳になる若者を対象に行った調査がある。夏の参院選で初めて選挙権を行使する年代だ。「投票に行く」と答えたのは、家族と政治や選挙のことについて「話したことがある」人では74%を占めた。

 政治は変えられる。野党共闘を進めた市民運動が、戦争法廃止2000万署名運動のようにもっと日常的にあらゆる街頭や地域に姿を見せ対話を広げることで、物言えぬ人びとの声を、叫びを呼び起こすことは可能だ。

 野党共闘は、戦争法廃止、集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回を共通の目標とした。市民の声でさらに押し上げよう。9条改憲するな。沖縄新基地建設をやめろ。軍事費を削減し、大企業と富裕層へ課税せよ。全原発を廃炉にせよ。避難者の生活を保障せよ。非正規雇用をなくせ。教育を無償化せよ。市民生活を救済せよ。この声を力に、護憲派候補の勝利を勝ち取ろう。

 市民の要求を明確に掲げて選挙を闘うことが、投票行動を促し改憲反対勢力の議席を増やして政治変革を実現する。

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