2016年05月20日発行 1428号

【若者の貧困なくす緊急課題/最賃1500円と給付型奨学金へ】

最低水準の日本の最賃

 2013年5月、国連社会権規約委員会は「(日本の)最低賃金の平均水準が最低生存水準および生活保護水準を下回っている」とし、最賃決定に際して考慮すべき要素の再検討を日本政府に求めた。

 2013年のOECD(経済開発協力機構)統計で、日本は同加盟国のうちの25か国中、フルタイム労働者の賃金の中央値に対する最低賃金の割合が下から5番目の低さだ。この傾向は現在も大きな変化はない。

 日本の最賃制度は格差と貧困の連鎖をより深刻にさせている。

 貧困の深刻な沖縄県の最賃は全国最低の693円。これでは最低限度の生活を営むことも困難だ。同県で、最低限度の生活を保つ収入がない世帯の割合を示す「貧困率」は2012年に34・8%、子どもの貧困率37・5%(山形大・戸室健作准教授)ときわだっている。全国でも給与所得が年々減少し、実質賃金の伸び率もマイナス。年収200万円以下のワーキングプアは1140万人にのぼる。

 とりわけ青年層の貧困は深刻だ。世界でも最高水準の大学学費のために、大学生の2人に1人が学資ローンである貸与制「奨学金」を借りている。青年層は、多額の負債を抱えて社会に出ざるを得ない。

 さらに、最賃は全国最高水準の東京でも907円。給料がほとんど最賃レベルの不安定雇用だと、「奨学金」の返済などとても不可能となる。

 最低限度の生活を営む権利を保障し貧困をなくすために、全国一律最低賃金1500円要求は極めて重要な課題である。「同一価値労働同一賃金」と「期間の定めのない安定雇用」を実現し、雇用の質を高めていくことも不可欠だ。

最賃引き上げる各国

 世界は生存権保障を求める労働者・市民の闘いによって、最低賃金引き上げと青年貧困対策を進めつつある。

 イギリスのキャメロン政権は、生活賃金として成人最低賃金時間当たり6・70ポンド(約1060円)を4月1日より7・5%引き上げ7・20ポンド(約1140円)とした。今後、生活賃金を年平均6・25%ずつ引き上げて、2020年までに時間当り9ポンド(約1420円)まで上げる計画だ。

 米ニューヨーク州議会は4月1日、最低賃金を現在の時給9ドル(約1008円)から15ドル(約1680円)に引き上げる法案を可決した。韓国では朴元淳(パクウォンスン)ソウル市長が、非正規雇用の正規化と、ベーシックインカム(最低限の所得補償)的な「青年手当」の支給を進めている。総選挙前に朴槿恵(パククネ)政権は「青年への所得保障」を公約に掲げざるを得なくなった。

 こうした国際的流れから全く立ち遅れているのが日本だ(図)。安倍首相は「最低賃金1000円」に言及するものの、具体案一つ示さない。


ローンではなく給付へ

 青年の貧困克服には、最賃引き上げ、正規雇用確保と一体で、大学学費無償化、給付型奨学金制度の創設が必要だ。学資ローン「奨学金」返済負担削減の数値目標を明確にした行動計画を政府に策定させることは急務となっている。

 世論の高まりの中で野党が一致して給付型奨学金創設を求め、安倍首相も選挙を意識して「給付制創設」を口にせざるを得なくなった。その財源は予算の一部付け替えや消費税増税ではなく、大企業の内部留保、富裕層への課税強化で確保するべきだ。

 県独自の給付型奨学金を創設した沖縄県は、独自の実態調査を基に、2016〜21年度の6年間で30億円の「沖縄子どもの貧困対策推進基金」を創設し、乳幼児から保護者まで5段階のライフステージに即した施策を開始した。

 政府に「貧困率削減の数値目標」を明確にした「子どもの貧困対策」大綱見直しを迫る必要がある。全国一律最低賃金時給1500円、給付型奨学金創設、大学学費無償化を実現し、「青年の貧困」をなくしていく全国的な取り組みを開始しよう。

 
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