2016年06月24日発行 1433号
(実発行日 6月17日)

【MDS集会講演要旨 改憲反対派を勝たせよう 参院選で改憲阻止、安倍内閣打倒の実現へ】

 参院選(6月22日公示、7月10日投票)が始まる。MDS(民主主義的社会主義運動)は6月12日、東京、大阪で集会を開き、改憲阻止、安倍政権打倒の展望を支援者とともに確認した。佐藤和義委員長(東京)、山川義保副委員長(大阪)の基調講演要旨を掲載する。(まとめは編集部、4・5面に関連記事)

最大争点は改憲阻止

 参院選の争点は改憲発議を許すか、阻止するかである。

 安倍晋三首相は1月4日、年頭記者会見で「(改憲を)参院選でしっかりと訴えていく。その中で国民的議論を深めていきたい」と述べ、改憲への意欲を明確に示した。だが、6月1日の記者会見では「(改憲発議に必要な)3分の2を募っているわけではない」。自民党の選挙公約には「衆参憲法審査会の議論を進め、国民の合意形成に努め、憲法改正を目指す」とあるだけだ。自民党関係者は「今は声を潜めた方がいい。参院で3分の2が取れたら改憲に動き出す。それが政治の世界だ」という(6/5 毎日)。本当の目標である改憲は隠して、議席を取った後で実行しようというのが安倍、自民党である。

 安倍はこれまでも議席を取った後、秘密保護法、集団的自衛権行使容認、戦争法を強行してきた(表1)。今回も同じ手法で進めようとしている。ごまかされず改憲を許すかどうかを明確に争点としなければならない。

ごまかしの手口

 安倍が争点としたいのはアベノミクス。「アベノミクスのエンジンを最大限ふかししていくことが必要だ」と述べ「この道を進んでいこう」と訴えている。安倍のごまかし、でたらめを暴き、安倍政権打倒の意思を固めよう。

 「日本企業の収益は、史上最高の水準。収益は、着実に雇用や賃金に回っている。就業者数は100万人以上増え、政権交代前はほとんど行われなかったベースアップが3年連続、多くの企業で実現する見込み」と成果を誇った。

 本当にそうか。東証1部上場企業の2016年3月期決算で営業利益10・5%増の33兆5550億円で過去最高だ(5/14朝日)。しかし実質賃金は減っている(図1)。15年は過去26年間で最低だった。就業者数は12年から15年で130万人増だが、正規が36万人減り、非正規が167万人増えた。賃上げとは、全国380万社のごく一部2600社余りの大企業の回答平均にすぎない。

 格差が拡大している。米誌『フォーブス』によれば、日本の富裕層上位40人の資産は15・4兆円、安倍内閣前の12年に比べて2・15倍に増えた。ユニクロの柳井やソフトバンクの孫は巨額の資産を持つ(表2)。他方で貧困層が激増。15年の給与所得者のうち年収200万円未満のワーキングプアは1139万人。高齢者で年収160万円以下の貧困層は14年で全体の25%893万5千人。09年に比べて158万1千人増加した(3/4東京新聞)。

  

 アベノミクスはグローバル資本に高利潤をもたらしたが、市民・労働者の生活は改善せず、格差が大幅に拡大した。共同通信の世論調査では市民の6割近くがアベノミクスに反対している。そればかりではない。安倍と同じ立場のグローバル資本、資本家からもアベノミクスは疑問視されだしている。

 日本最大、最強のメガバンク三菱東京UFJ銀行の幹部は「金利がマイナスになっている国債を買い続けることは難しい」(6/9朝日)という。マイナス金利での損失、国債が暴落する可能性を考慮し国債保有高を減らしたいわけだ。アベノミクスによる金融緩和政策への疑問をグローバル資本自らが突きつけたのだ。

めくらまし策

 安倍はアベノミクスへの強い批判を乗り越えるために様々なことをしてきた。

 オバマ広島訪問を最大限利用した。安倍の意を受けて、メディアは大きく報道。多くの市民がオバマ訪問を支持し、内閣支持率はかなり上昇した。
 だがオバマは今後30年間で1兆ドルもの核兵器近代化を行おうとしている。原爆投下の責任を認めないのは今後も核兵器を開発し保持し続けるためだ。安倍とよく似ている。戦争責任を認めたくないから、誰がアジアの人びとに被害を与えたかをあいまいにする。自衛隊が武力行使する法律を平和のためという。まさに同じ穴のムジナだ。騙されてはいけない。オバマ広島訪問は、戦争を実行している、これから実行しようとする2人の共謀劇であった。

 消費税率10%への引き上げ延期。14年11月、安倍は「再び延期することはない。はっきりと断言する」と述べていたが、また延期を表明した。「再延期するとの私の判断はこれまでの約束とは異なる新しい判断だ。公約違反ではないか、との批判も真摯に受け止めている。新しい判断について、参院選で国民の信を問いたい」とした。

 消費税増税に日本経済が耐えられないことは誰でもわかる。安倍は追認したにすぎない。政府は消費税増税延期の財源の手当てをせず放置しようとしている。これは直接的には社会保障費の切り下げ、将来的には日本財政崩壊をもたらすことになる。アベノミクスの唯一の受益者、1%のグローバル資本と富裕層から税をとれば済むことだ。 

1億総活躍プラン

 安倍は「1億総活躍プラン」を閣議決定した。アベノミクスがもたらした格差拡大、市民生活破壊に何らかの対応をしなければ選挙で完全に敗北すると考え、野党の主張と同じような政策を打ち出した。

 希望出生率1・8実現のために保育の拡充、保育人材確保とプランはいう。保育士をやめさせていったのは保育所民営化政策だ。政府、総務省は民営化を進め、公務員保育士を大幅に減らした。利潤原理の運営で、正規保育士の待遇切り下げ、非正規保育士の拡大が進んだ。

 介護も同じだ。全国の特養入所待機者約52万人(13年度)はさらに増え、介護士は約38万人不足する見通しだ(6/6毎日)。だが介護士の給与は低く、やめていく人が多い。介護への支出抑制方針を変えず部分的給与引き上げだけでは介護難民はなくならない。安倍は「自助=家族が介護しろ」だ。社会保障削減の根本を変えない。保育士も、介護士も、安心して仕事が続けられるわけがない。

 青年学生の貧困対策として給付型奨学金の創設を検討するという。だが文科省の方針は生活保護世帯の子ども対象というけち臭いもの。市民の要求に応えるものではない。世界の趨勢は学費無償化。奨学金が有利子返済の国などほとんどない。その根本を変えず、「創設の検討」でごまかそうとしている。

どのように勝利するか

 安倍は必死である。野党共闘の成立に怯え、市民労働者の要求に応えるかのようなポーズをとり、議席をかすめ取ろうとしている。これを許さないために我々は全力で選挙戦を闘わねばならない。

 まず選挙戦勝利のために確認すべきは戦争法廃止2000万人署名の成果である。この署名の過程で野党共闘が進み、参院選勝利の具体的展望を作り出した。だが安倍はNHKを中心にメディアを使い、成果を誇り争点をずらしてくる。オバマ広島訪問劇のように支持拡大のために様々な演出をする。こうしたメディア支配のもとでは「野党は共闘、選挙に行こう」だけでは決定的に不十分だ。

 自民党は国政選挙では、17%程度の絶対得票率で6割以上の議席をとってきた。不公正な選挙制度と野党分断の結果だ。野党統一が全国32の1人区で実現した今、働きかけを強めるならば勝利できる。

 ではMDSは選挙をどのように闘うか。

 沖縄に連帯して闘うことだ。6月5日沖縄県議選で翁長(おなが)県政与党が勝利した。元米海兵隊員による女性強姦殺害事件への強い怒りがこの結果をもたらした。戦地から沖縄に戻ってきた兵士たちは殺人の原理をそう簡単には切り替えることができない。殺人原理と市民生活とは相容れない。基地撤去しか解決策はない。

 オール沖縄の闘いに本土から連帯することで、辺野古新基地建設は阻止できる。それは同時に戦争法を実行させず、改憲を阻止することである。

 政策実現の財源は十分にある。グローバル資本と富裕層は税金を軽減されている。90年度と比べて16年度は法人税・所得税を合わせて14兆円も減った(表3)。大企業や高額所得者優遇税制がすすめられてきた結果だ。パナマ文書で暴かれたようにグローバル資本、資本家はタックスヘイブンを利用している。日本から15年末で74兆4264億円がケイマン諸島に投資されている。安倍政権の下で25兆円増えている。タックスヘイブンへの課税を強化すれば税収は大幅に増える。

 MDSは選挙政策を掲げ、一致する候補を支持し闘う。改憲勢力を減らし、改憲反対―護憲勢力が3分の1以上を獲得するために闘う。共闘候補を支持する。改憲の争点隠しを許さずアベノミクスの失敗を暴露する。「1億総活躍」のでたらめを暴露する。共闘が成立していない比例代表では福島みずほさん、複数区でも支持する改憲反対候補とともに闘う。続く衆院選で共闘候補を当選させ、改憲派を完全に粉砕し、戦争と新自由主義から決別した民主主義に貫かれた社会を作り出そう。
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