2016年06月24日発行 1433号
(実発行日 6月17日)

【ウソとゴマカシの 自民参院選/改憲を隠し 3分の2の議席狙う】

 参院選の選挙戦に入ったとたんに、安倍は改憲に全く触れなくなった。アベノミクスの破綻をごまかし、改憲を隠して票をかすめとろうというのは詐欺(さぎ)に等しい。安倍のウソをあぶり出し、改憲勢力を一掃しなければならない。

 通常国会開会日の1月4日、安倍は記者会見で「憲法改正をしっかり訴え、その中で国民的議論を深めていきたい」と述べた。2月の衆院予算委員会では「参院選は改憲も争点にするのか」との野党の質問に「自民党の憲法改正草案がある。衆院2回、参院1回、このことも掲げながら選挙を戦い、大勝を得た。9条2項も変えていく」と答弁した。3月の参院予算委員会では、改憲を「私の在任中になしとげたいと考えている」とも述べている。安倍の自民党総裁任期は2018年9月まで。あと2年で改憲する腹だ。

票のために改憲を一時封印

 だが、いざ参院選が目前に迫ると改憲は鳴りをひそめた。

 代わりに選挙に不利な消費税増税の先送りを表明した。2014年、同様に増税先送りについて「国民に問う」と解散総選挙に持ち込み衆院3分の2をかすめとった手口を再現しようというのだ。サミットでは「アベノミクスを世界に広げる」とアピールし、オバマのヒロシマ訪問を成果と自賛した。

 参院閉会後の遊説ではアベノミクスの「成果」を訴えるばかりで改憲には触れない。

 自民党関係者は「改憲は自民党の党是。隠しているわけではないが、今は声を潜めたほうがいい。参院で3分の2が取れたら改憲に動き出す。それが政治の世界だ」(6/5毎日)とあからさまに述べている。有権者に聞こえの良い政策のみを強調し、おおさか維新の会なども含めた改憲推進勢力が勝てば「信任された」と直ちに改憲発議に突き進む。

 発表されている選挙公約パンフレットも同様だ。

 自民党が政権の座に返り咲いた2012年の衆院選の選挙公約は、改憲は末尾の数行で「自民党改憲草案」の要約を11行載せたのみ。

 13年の参院選選挙公約は、全42ページのうち最後の2ページに草案の要約を載せた。これでもこの間の選挙公約では破格の扱いだ。

 14年衆院選では、草案の内容には触れず「憲法改正国民投票法一部改正法が施行されたことに伴い、国民の理解を得つつ憲法改正原案を国会に提出し、憲法改正のための国民投票を実施、憲法改正を目指します。憲法改正のための投票権年齢が4年経過後に18歳になることを踏まえ、選挙権年齢を前倒しして18歳以上に引き下げます」との6行が末尾にひっそりと書かれている。

 そして今回、相変わらず公約の冒頭はアベノミクスのアピールに終始。平和記念公園でオバマと握手を交わす写真や、サミットの写真を大きく掲載し「世界のリーダー」であるかのごとく印象付けるつくりとなっている。一方改憲については、1000行を優に超える「自民党政策BANK」の末尾10行に「 わが党は、結党以来、自主憲法の制定を党是に掲げています。憲法改正においては、現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つの基本原理は堅持します。現在、憲法改正国民投票法が整備され、憲法改正のための国民投票は実施できる状況にありますが、憲法改正には、衆参両院の3分の2以上の賛成及び国民投票による過半数の賛成が必要です。そこで、衆議院・参議院の憲法審査会における議論を進め、各党との連携を図り、あわせて国民の合意形成に努め、憲法改正を目指します」とあるのみだ。

政策パンフもウソ

 政策パンフに書かれた「現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つの基本原理は堅持します」に至っては全くのウソだ。

 「自民党憲法改正草案」は、天皇を「国家元首」とし天皇の下での国民統合を説く。そして、天皇を頂点とする国家の利益を「公益」とし、基本的人権を「公益」に従属させる。戦争放棄を定めた第9条第1項は変更せず、戦力不保持・交戦権の否定を定めた第2項を「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と変更。過去繰り返されてきた「自衛のための先制攻撃」を可能とする。そして、国防軍保持を新設した。

 「3つの基本原理」を覆す改憲案であることを隠し、その改憲を目指すことも隠す。

 憲法を争点の前面に押し上げ、改憲勢力を一掃する―これが参院選の課題だ。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS