2016年08月12日発行 1440号

【1440号主張 都知事選 鳥越さん落選の教訓 野党・市民共闘を一層強化へ】

弱者のヒロインではない

 7月31日投開票の東京都知事選は、小池百合子が291万票の地滑り的勝利となった。

 小池は、自民党推薦を受けられなかった弱い立場≠演じ、自民党や都議会の「ブラックボックス」と闘うポーズをとった。マスコミは弱者のヒロイン≠ニ連日報道した。その結果、59・73%の高投票率(前回より13・59ポイント増)のもと、無党派層の5割、自民党・民進党支持者の半数近くの票を集めた。

 では、小池は安倍政権と闘い、庶民の味方となるのか。

 断じてそうではない。小池は自民党員で核武装論者であり、極右の日本会議国会議員懇談会副会長だ。反人権ヘイト団体「在特会」とも関係が深い。安倍首相も、自公推薦の増田候補の街頭応援演説に行かず、鳥越よりましとして「(都知事は)小池だ、小池だ」と発言している(7/30『女性自身』)。改憲勢力の都知事としてタッグを組む意図だ。

 都政の変革を求める都民の願いは、極右政治家にかすめ取られてしまった。

野党共闘の分断策動

 4野党共闘の鳥越候補と市民の闘いは、告示2日前の立候補表明という大きな出遅れだったが、日に日に運動を盛り上げ134万票を築いた。

 この意味は大きい。参院選の野党と市民の共闘を継続・発展させたことだ。都知事選の野党共闘は実に30数年ぶり。鳥越支援市民団体連絡会が、「鳥越俊太郎を応援する市民センター」、総がかり行動実行委、革新都政を作る会、市民連合、地域勝手連、自治体議員など全勢力参加で発足し奮闘。終盤には、非核都市宣言、250キロ圏の原発廃炉を鮮明に訴え、安倍改憲と闘う陣形が首都で強化された。

 しかし、野党4党の参院選比例票248万を固めることはできなかった。「準備不足」とだけ見るのは表面的だ。背後に、野党・市民共闘を分断する執拗な策動が存在し今も続く。6月、舛添前都知事辞任不可避となったときから、安倍政権は都知事選での自公民の相乗りを持ちかけ、民進党内の保守派を誘い、野党候補者選びを難航させた。鳥越統一候補が決まると、連合東京は支持を見送った。投票2日前には、民進党岡田代表が代表選撤退を表明し、野党共闘に冷水を浴びせた。

市民の闘いで共闘強化を

 戦争のための改憲を進めたい安倍政権は、野党共闘を恐れ、分断して広がらないように必死に手を打っている。マスコミは、鳥越落選を材料に「民・共共闘を見直せ」とキャンペーンを強めている。

 都知事選の教訓は、「衆院選でも4野党共闘の枠組みで闘う」の合意を政党任せにせず、地域から運動の力で共闘の実体を強めることの重要性だ。オール沖縄≠ヘ辺野古阻止の闘いの上に築かれた。命と権利を守る市民の様々な闘いこそ共闘に力を与える。

 鳥越選対に対しても、市民団体、議員、個人による運動強化の意見が山ほど寄せられ、激論が交わされ、実現させた。自主的な市民の勝手連運動が次々とでき、神奈川、千葉、埼玉からも市民が参加した。こうした財産を発展させ、地域のすみずみに至る市民の運動強化につなげることだ。

 戦争・改憲、貧困、原発を許さず、個人の尊厳が尊重される社会変革への共闘をいっそう強めよう。

 (8月1日)
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