2016年09月02日発行 1442号

【IVAW(反戦イラク帰還兵の会) コープランドさんに聞く 人びとの生活を破壊したイラク派兵】

 2016ZENKOで米国IVAW(反戦イラク帰還兵の会)のクロード・コープランドさんは、自らのイラク派兵での体験をもとに軍隊の本質や日本の運動について語った。その要旨を紹介する。

 イラクには15か月間派遣されていました。思い出すことのほとんどは、現地で会ったイラクの人たちのことです。今どうしてるんだろうかと。

加害者としての15か月

 私は他人の家に入り込んだ「訪問者」にすぎません。イラクの人びとにとっては、自らの家が破壊されるのを目にし、家族を連れ去られ、生活が大混乱してしまった戦争でした。その加害者の側にいたくないことに初めて気がついたのは、悲しいかな、派遣が終わって現地を去る時でした。

 イラクでの最初の半年、私の部隊はバグダッドに駐留していました。そこでの任務の一つは、町の電気や水道の復興を支援することでした。その支援と引き換えに、地域で怪しい動きをしている人物や活動の情報を寄せてもらうのです。その町の電気や水道は、私たちの部隊がドイツへ移動するようになった時点でも改善されていませんでした。市民は私たちを助けるために命をかけているのに、その犠牲に対する何の見返りもなかったのです。私自身は、こうした経験を(活動へのエネルギーを貯める)電池として背負って生きています。

 「帝国」(米国)が獲得するものに比して、「帝国」は何をもたらすのか。人びとにとっては生活が奪われたこと。それが悲しい真実です。私は常にこの現実に反対します。

軍は金持ちを守る暴力

 軍というのは暴力が容易に許容される組織です。軍は、どの国でも暴力の権威としての役割を果たします。軍の本質は、海軍、陸軍といった正式な軍隊に限定されるものではありません。警察や学校組織にも軍の本質が存在しています。米国では、警察が軍事化されており、もはや市民の権利を擁護する制度ではなく、金持ちを守るための制度になりさがっています。

 高校や大学にも、ROTC(予備役将校訓練課程)という講座があります。軍を教育を受け続ける機会の一つ∞すばらしい人生経験∞入隊によって世界を見ることができる場所≠ニして描き、入隊は冒険だとすら言うのです。私自身高校でそうした講座に参加し、軍に対するイメージをそこで形成しました。

 軍は、あからさまに力の権威として存在し、自らの権益擁護のためにのみ機能します。軍はその行動が正当化され、駐留している国で市民の安全のための法律が軍には適用されません。これ自体が明らかな不正義です。

新基地反対は人権闘争

 多くの発言を聞いて、沖縄新基地建設反対闘争がより力をもつために何が必要と考えたかについて述べます。

 まず、沖縄の反基地闘争は、沖縄の人びと、あるいは日本人にとっての課題であるばかりでなく、広く国際的な人権闘争だということです。

 沖縄では、オール沖縄を築いて政治的には最善の陣営が作り出されています。それでもなお、沖縄の願いは無視され、すべての関係者にとって相互の恩恵になるような対応がなされていません。

 もう一つの大切な点は、新基地建設がもたらす様々な影響を指摘することです。国際的に共通認識になっているのは、米軍はもっとも大きな環境阻害要因の一つだということです。高江の状況、あんな小さな村にヘリパッドを建設することがどれだけ大きな影響を村民や村に与えるか。沖縄の問題は世界の多くの人びとが共有する関心であり、県民に勝利してほしいと願っている課題なのです。

 *   *   *   *

 米国でも日本でも、政治家が市民を代表できていないことが共通のテーマになっています。このことを認識するのは重要です。

 安倍政権は日本、沖縄の民衆の願いを無視してきました。

 これに対し、全交は組織として、地域と民衆の利益を代表しない政権を退陣させるためにさまざまな課題について一貫して取り組んでいます。沖縄や福島など直接の当事者の声を発信しているのは世論の支持を得るために重要です。また、正しい立場の議員を国会へ送る闘いも勝利へと大きく前進しています。

 安倍政権も、全交など市民の運動の力を過小評価していると、不可避的に退陣を余儀なくされるでしょう。

 
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