2016年11月11日発行 1452号

【南スーダンは内戦激化 でたらめな派兵継続政府文書 「新任務」派兵許すな」】

 安倍政権は10月25日、自衛隊南スーダン派兵を来年3月まで延長することを閣議決定し、「派遣継続に関する基本的考え方」(以下、政府文書)を発表した。PKO(国連平和維持活動)派兵にあたって文書を出すのは初めてだ。反対世論の前に継続を正当化する文書を出さざるを得なかったのだ。運動を強め、「駆け付け警護」など新任務決定と自衛隊継続派兵を許さず、即時撤退させなければならない。

ごまかしだらけの政府文書

 政府文書はごまかしと矛盾に満ちている。治安情勢が厳しいことは十分認識しており、今後も武力衝突の発生は十分に予想されるが、PKO5原則は引き続き維持され派兵継続は適当だ、と結論付ける。その根拠は、紛争当事者たる「国家に準ずる組織」は存在していないため、「国家または国家に準ずる組織の間で行なわれるものである戦闘行為」は発生していないというもの。武力衝突はあるが、戦闘はない≠ニいう驚くべきへりくつだ。

 7月に南スーダンの首都ジュバで起きた300人以上の死者を出した大規模戦闘は、軍を二分する大統領派と前副大統領派による戦車や攻撃ヘリも使用したもの。まさに「国家または国家に準ずる組織」同士の戦闘だった。

 国連安保理決議2304号(8/12)は、事態を「文民、国連職員、国連施設及び資産への攻撃を含んだ戦闘行為」として非難。米議会調査局の9月報告も南スーダンの現状を「戦争」と表現した。世界中の誰が見ても「戦闘」「戦争」なのである。

 政府文書は、かつて日本と中国との軍事衝突を「戦争」ではなく「事変」と言い換えて侵略戦争に突き進んだ軍国主義の歴史を思い出させる。

 南スーダンでは、7月の戦闘以降も、稲田防衛相が訪問した10月8日当日、ジュバ近郊の中央エクアトリア州で市民21人が死亡する武装襲撃が発生。国連南スーダン派遣軍が同12日「国内の治安悪化を非常に懸念」と声明を発表した直後、14、15日、北東部で60人が死亡する政府軍と反政府軍の戦闘が起きている。この内戦状態を一片の政府文書で消し去ることはできない。

 岸外務副大臣も10月26日衆院外務委員会で、PKO法自体に「武力紛争」の定義がないことを認め、南スーダンで武力紛争が起きていないとする根拠を明示できなかった。政府文書のでたらめさが早くも暴かれた。

PKO5原則は崩壊

 政府文書は「部隊を撤退させた国はいない。むしろ国連は新たに4千人の地域保護部隊の増派を決めるなど、取り組みを強化」と派兵継続の正当化を図る。

 しかし、増派を決めた国連安保理の決定(決議2304号)は、「文民保護」の名の下、国連職員や施設等への攻撃が予想される場合に、政府軍、反政府軍という攻撃の主体にかかわらず先制攻撃を認めた内容だ。創設される地域保護部隊は、国連自らが紛争当事者として軍事力で強制的に南スーダンに介入することを宣言した決議の実行部隊だ。和平が崩れたからこそ、国連部隊を増強したのである。

 その状況下での派兵継続は、「国家または国家に準ずる組織」との戦争に参加し、紛争の当事者になることを意味する。反政府勢力のマシャール前副大統領は9月26日「武力で抵抗する」と声明を発表し、10月20日には「和平合意も統一政権も崩壊した」と表明した。9月下旬発表の国連安保理の専門家パネル報告も「和平協定に基づく暫定政権は事実上崩壊」と評価している。

 以上をみれば、PKO参加5原則(注)が崩壊しているのは明らかだ。大前提の「紛争当事者間の停戦合意」はなく、「国連平和維持隊の中立的立場」も、国連安保理の先制攻撃を認める決議により崩れ去った。政府文書は、継続派兵に全く道理がないことを浮かび上がらせている。

改憲への突破口狙う

 安倍政権は、11月20日以降陸上自衛隊第9師団の部隊(青森)を派兵しようとしている。この部隊に新任務を付与する閣議決定を11日にも行うことを狙う(10/29毎日)。

 新任務とは、戦争法強行で盛り込んだ他国部隊等を救援する「駆け付け警護」と他国部隊との「宿営地の共同防護」であり、使用する武器も限定されない。

 南スーダンでは、中国のPKO部隊の装甲車が砲弾を受け隊員2人が死亡(7/10)。政府軍、反政府軍を問わずPKO部隊への敵対行為が頻発している。自衛隊に新任務を付与して派兵すれば、自衛隊が戦後初めて海外で政府軍や反政府軍という「敵軍」と交戦し、殺し殺される事態になりかねない。

 安倍は、戦争法に基づく新任務を現地で発動させることで自衛隊の武力行使をもくろんでいる。現実の戦闘によって憲法9条否定の実態をつくり出し、憲法改悪の突破口にしようとしている。

 政府・防衛省への「派兵するな」「新任務の閣議決定するな」のファクス要請や「沖縄・改憲阻止緊急署名」と結び、即時撤退、派兵阻止の闘いを大きく広げよう。

(注)PKO参加5原則

 (1)紛争当事者の間で停戦合意が成立 (2)国連平和維持隊が活動する国や紛争当事者が日本の参加に同意 (3)国連平和維持隊が中立的立場を厳守 (4)以上の条件を満たさなければ撤収できる (5)武器使用は生命防護のため必要最小限とする。このうち1つでも満たさなければ派兵できない。

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