2017年03月10日 1468号

【疑惑の「安倍晋三小学校」/しらじらしい首相の「関与否定」/軍国主義教育を熱烈支援】

 学校法人「森友(もりとも)学園」に国有地が不当に安く払い下げられていた問題で、安倍晋三首相は土地売却への関与を重ねて否定。昭恵夫人が同学園の小学校名誉校長を辞任したことを明らかにした。「自分たちは利用されただけ」と言いたいのだろうが、もちろんこれは大ウソだ。安倍首相は森友学園が進める軍国主義教育の賛同者なのである。

積極的な広告塔

 夫人の名誉校長就任は「聴衆の前で発表され、はっきり拒絶できなかった」。「安倍晋三記念小学校」の文言で寄付金集めが行われていたことについては「何回も断ったのに名前を使われた。本当に遺憾で抗議をした」。森友学園の籠池(かごいけ)泰典理事長は「非常にしつこい人」「教育者としてはいかがなものか」。

 2月24日の衆院予算委員会で安倍首相は、先週の答弁とは態度を変え、森友学園を非難する発言を連発した。「悪いのは森友側。自分たちは利用された被害者だ」と印象づけたいらしい。だが、その答弁は矛盾だらけであった。

 「安倍晋三記念小学校」の件に関し、17日の衆院予算委では「いま話をうかがって初めて知った」と述べていた。だが、24日の同委員会では「お断りをし続けた」。この答弁が正しいのなら、前者は虚言ということになる。

 籠池理事長についても、17日の答弁では「先生の教育に対する熱意は素晴らしいと妻から聞いている」「私の考え方に非常に共鳴している方」と評価していた。それが一転して教育者失格よばわり…。熱心な支持者でも自分に災いを及ぼすとなると簡単に切り捨てる。これが安倍晋三の本性なのだろう。

 話を戻すと、安倍夫妻が4月開校予定の「瑞穂の國記念小學院」(大阪府豊中市)の広告塔になっていたのは事実である。それもただのお飾りではない。森友学園の軍国主義教育に賛同し、旗振り役を務めていた。現職の総理大臣夫妻が支援する学校法人に、国有地が不透明な経緯で激安売却された。「何らかの口利きがあったのでは」と疑うのは当然であろう。

「教育勅語」を毎朝

 安倍夫妻が賛同する森友学園の教育とはどんなものか。籠池理事長は、安倍政権を支える右翼組織・日本会議の大阪支部役員だ。彼が校長となる「瑞穂の國記念小學院」のホームページには、「教育の要」として次のような文言が並ぶ。「天皇国日本を再認識」「愛国心の醸成。国家観を確立」「教育勅語素読・解釈による日本人精神の育成(全教科の要)」等々。

 「教育勅語」は戦前の軍国主義教育の基本原理を示したものであり、そのポイントは「いざ戦争になれば天皇(国家)のために命を投げ出せ」と教え込むことにあった。敗戦後は当然、憲法の理念に反するとして国会決議で廃止された。そんな軍国主義の遺物を「全教科の要」に据えるというのである。

 すでに、森友学園が運営する塚本幼稚園(大阪市淀川区)では、園児に毎朝「教育勅語」を唱和させている。「海行かば」(「天皇のために死のう」という歌詞)などの軍歌を歌わせ、自衛隊の行事に参加させることも多い。

 運動会では「安倍首相がんばれ。安保法制、国会通過よかったです」と園児に選手宣誓させていた。この時は「日本を悪者として扱っている中国、韓国が心を改め、歴史教科書で嘘を教えないようお願いします」とも言わせていた。「よこしまな在日韓国人・支那人」などと記した文書を保護者に配布したこともある。

 このように、森友学園の「愛国教育」なるものは排外主義の煽動とセットになっている。「日本のために命を捧げることは正しい。日本に逆らう者は悪い奴」という思想を幼少期から叩き込むことが戦争遂行には欠かせないからだ。なるほど、「こちらの教育方針は主人も大変素晴らしいと思っている」(昭恵夫人)と、安倍首相が惚れ込むわけだ。3歳児からの「日の丸・君が代」強制など、幼児に対しても「愛国教育」の全面展開を狙う彼は、同学園の「実践」を先進・模範事例と見ていたのであろう。

小学校でも「洗脳」を

 2015年1月8日付の産経新聞は、塚本幼稚園の視察に訪れた昭恵夫人が「感涙にむせんだ」エピソードを紹介している。園長から「安倍首相ってどんな人ですか?」と問いかけられた園児らが「日本を守ってくれる人」と答える姿を見て、彼女は涙を浮かべてこう話したという。「ありがとう。(安倍首相に)ちゃんと伝えます」

 相当に気持ち悪い光景だが、森友学園の教育に心酔した彼女は次のような発言までしている。「普通の公立学校の教育を受けると、せっかく、ここ(塚本幼稚園)で芯ができたものが、その学校に入った途端に揺らいでしまう」(2015年9月/名誉校長就任のあいさつ)

 籠池理事長も同じことを話しており、小学校の運営に乗り出した理由なのだが、その問題意識を昭恵夫人はしっかりと共有していた。安倍首相も同じであろう。軍国主義教育による「洗脳」の実験場を小学校でも確保する。そのために国と大阪府が森友学園に様々な便宜をはかった−−事実関係を総合すると、そんな筋書きが見えてくる。

   *  *  *

 森友学園との関係を否定し、懸命の火消しを図る安倍首相。「私や妻が関係したということになれば、間違いなく首相も国会議員も辞める」と、強気の発言も行った。だがこれは、激しくうろたえ余裕をなくしていることの裏返しでしかない。深まる「安倍晋三小学校」疑惑。追及の手を緩めてはならない。   (M)



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