2017年10月20日 1498号

【プライバシーは自己決定の権利/カナタチ国連報告者が講演/日弁連「共謀罪反対」シンポ】

 「共謀罪に反対し、プライバシー権を守るシンポジウム」が10月2日、東京・弁護士会館で開催された(主催―日弁連)。国連人権理事会プライバシーの権利に関する特別報告者ジョセフ・カナタチさんが講演し、日本政府に「米英が行っているように私を公式に招聘(しょうへい)してほしい」と求めた。

 カナタチさんはプライバシー保護の重要性を強調する。「共謀罪がなかったとしても日本にはプライバシーのリスクが存在した。スマホを通してあなたを一番知っているのは、家族でも恋人でもない。ワンクリックごとに企業や政府のために電子的な足跡を残し、自ら監視の対象になっている。国境なきインターネットの時代には、保護策が必要だ」と述べ、「一人ひとりが、どんな人間になりたいかを自分で考え決める権利、自由に人格を形成する権利を持っている。だからプライバシーが重要なのだ。情報の自由を得て表現の自由があって、自分がどうするかを決めていく。そのことによって人格が自由に形成されていく。プライバシーなくして民主主義も自由もない」と訴えた。

 カナタチさんは5月、共謀罪法案に関して懸念を表明する書簡を安倍首相に宛てて送った。「プライバシーへの干渉は、相当性と必要性がなければ乱用であり、それに対する保護措置が必要になる。しかし日本には、監視を規制する法、監視をチェックする独立した監督機関はない。監視についての国会審議は1年か2年かけて行われるものと思っていたが、最初から90日間で法案を可決させようという意図が感じられた」と批判する。

政府の回答は法施行後

 日本政府の回答は法律施行後の8月になって外務省のウェブサイト上に出された。「批判は全く当たらない」と繰り返し、「誠意を持って回答するよう努めた。議論がなされているただ中の重要法案に対し公開書簡の形で一方的に意見を公表するのではなく、外交チャネルを通じた正規のルートで問い合わせいただければ、今後直接説明する用意がある」と結んでいる。

 カナタチさんは「直接話し合いたいと書いてあるが、公式に招聘を。今回非公式にでも会おうと思ったが、衆院選挙を待ってからにした」とコメント。最後に「(共謀罪法強行で)いいことがあったとしたら、プライバシーへの関心が高まったこと。選挙で安倍首相が変わろうが新政権になろうが、新しい保護措置をとらせてください。とったとしても、闘いが終わると夢見ないでください」と警鐘を鳴らした。

 特別報告者の最終報告は来年3月以降にまとめられ、政府による監視が強まるデジタル時代のプライバシー保護・促進に関する勧告が提案される見込みだ。

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