2017年10月27日 1499号

【安倍が「推定無罪」無視の大暴言/森友・加計疑惑から逃げまくり】

 安倍晋三首相がテレビ討論会で森友学園の問題に言及した際、同学園の籠池泰典前理事長を「詐欺を働く人物」と表現した。刑事事件における「推定無罪の原則」を無視した物言いに、首相失格の暴言との批判が上がっている。

 この発言は「報道ステーション」が企画した党首討論会(10/10放映)の場で飛び出した。森友学園に対する国有地売却の件を追及された安倍は、自身や昭恵夫人の関与を強く否定。「こういう詐欺を働く人物のつくった学校でですね、妻が名誉校長を引き受けたことはやっぱり問題だった。やはりこういう人だからだまされてしまった」と言い放ったのである。

 籠池前理事長は補助金をめぐる詐欺罪で起訴されたが、まだ裁判も始まってない。元検事の郷原信郎弁護士は「勾留中で反論の機会がないのに『詐欺を働く』と一方的に断言しており、重大な人権侵害だ」と指摘。「行政の最高責任者が起訴内容をあたかも確定事実のように発言するなど司法の独立の観点からあってはならない」と問題視する。

 「妻はだまされた。責任はない」と言いたいのだろうが、森友学園の軍国主義教育に昭恵夫人が賛同し、広告塔の役割を担っていたことは紛れもない事実である。安倍自身、籠池前理事長について「私の考え方に非常に共鳴している方」(2/17衆院予算委)と肯定的に評価していた。

 それなのに、自分に害を及ぼすと判断した途端、あっさり切り捨て、テレビで犯罪者よばわりする始末。まったくもって卑劣な印象操作と言うほかない。

リセットしたかった

 そもそも、無理筋の冒頭解散自体が森友・加計学園疑惑の追及から逃れるためだった。この時期の衆院解散には否定的だった菅義偉官房長官は側近議員にこう漏らしたという。「反対したさ。でも、総理が言うんだ。国会が始まったら、またモリ・カケばかりだろ、もうリセットしたいんだって」(10/7毎日)

 これが安倍の本音である。「丁寧に説明したい」なんて、本当はこれぽっちも思っていない。事実、選挙戦でこの問題に触れられることを極度に嫌がっている。別の番組の討論会(10月9日放映「NEWS23」)では野党側の追及にいら立ち、収録の合間に「いつまでモリカケやってるんだ!」と怒鳴り散らしたという。

 地元山口4区の安倍晋三事務所は、昭恵夫人が演説する集会の取材拒否を地元記者クラブに通達した。ネット上で「昭恵を取り囲みましょう」という呼びかけがなされているというのが理由だという。

 安倍が森友・加計疑惑を最大のウィークポイントだと自覚している証拠である。新党結成をめぐるドタバタ劇でモリカケ関連の話題をメディアから一掃してくれた小池百合子都知事に、安倍夫妻は心から感謝しているのではないか。

詐欺師はお前だ

 「補助金適正化法違反」で告発された籠池夫妻は大阪地検特捜部に詐欺罪で逮捕され、証拠隠滅のおそれがあるとも思えないのに長期勾留中だ。拘置所での接見(面会)や手紙も禁止されているという。

 この選挙期間中、籠池夫妻が自由の身だったら、自分たちを見捨てた安倍を追い回していただろう。籠池出現でメディアが集まり、安倍の「こんな人たちに負けるわけにはいかない」発言がクローズアップされた都議選最終日(7/1秋葉原演説)の二の舞になる可能性が大いにあった。それを未然に防ぐための国策逮捕だったのか。

 ともあれ、これまでさんざんウソを並べて、戦争と新自由主義路線を進めてきたのは安倍晋三その人である。「詐欺を働いているのはお前だよ」と、あたりまえのツッコミを入れておきたい。      (O)

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