2017年11月17日 1502号

【反貧困ネットワークが10周年集会/希望と連帯の社会めざして/韓国「住民連帯」活動に学ぶ】

 反貧困ネットワーク(宇都宮健児・代表世話人)は10月21日都内で、結成から10年が経過したのを記念して全国集会を開いた。

 「希望と連帯」を掲げた社会運動が広がる韓国からゲスト2人を迎えた。

「分かち合い」の活動

 1人は、ソウル市南部の冠岳区(クァナック)で住民連帯活動の実践を重ねている非電化工房ソウル代表のカン・ネヨンさん。韓国の「社会的経済」(協同組合やNPOなどの非資本主義的な経済活動)の歩みに触れた後、「冠岳区住民連帯」の取り組みを詳しく紹介した。

 冠岳区(クァナック)は人口約53万人。高度成長期に地方から職を求めてやって来た人たちが暮らす貧困層密集地域だ。90年代に再開発が進み、住宅立ち退き・追い出し問題が頻発。冠岳区住民連帯は追い出される住民を組織し、居住の権利を守る彼らの活動を支えた。地域の世論づくりをめざし、冠岳区住民新聞社を創設。福祉団体も発足させた。97年、韓国はIMF(国際通貨基金)管理下に置かれ、冠岳区でも失業者が急増する。住民連帯は地域で雇用を生み出す失業対策に力を入れた。

 2000年代になると、居住弱者を対象に住居費支援や住宅修繕の相談を行う冠岳区(クァナック)住居福祉センターを設立。賃貸マンションに住む女性向けに識字教室を開き、ここに通う女性たちが中心になって地域の高齢者や孤立している人びとを訪問する。「ナヌムイウッ(分かち合いの隣)」と呼ばれる活動で、「分かち合い(ナヌム)の店」や「分かち合い(ナヌム)の居場所」もできた。「100人のサンタクロース」が一人暮らし世帯に食事を配ったり、中学生・高校生がお年寄りから歩んできた人生の聞き取りをしたりといったイベントも実施。福島原発事故後は、エネルギー自立マウル(町)を始動させ、再生可能エネルギーの普及に努めてきた。

ニートに月5万円支給

 冠岳区(クァナック)住民連帯は今、市民参加による予算策定や区議会活動のモニタリングなど政治への働きかけを強めている。カンさんは「行政だけができる役割ではない。今まで取り組んできた地域のNPOが制度のすき間を埋める。お互い努力し合って貧困という問題が解決できる」と指摘する。

 もう1人、ソウル市青年活動支援センター長のキ・ヒョンジュさんからは「ソウル市はニート(就学も就労もせず職業訓練も受けていない若者)に月50万ウォン(約5万円)の手当を最大6か月間支給する事業を始めた。これで1日3時間、アルバイトしなくて済み、自分の自由時間が確保できる。青年の“時間の貧困”に対する取り組みだ」と報告があった。

 集会では続いて、過労死家族や非正規女性労働者、障がい者、キャバクラ就労者、原発事故避難者、官製ワーキングプア、生活保護受給者らがリレートーク。最後に「生きづらさを抱えた者同士の分断の罠には陥らない。私たちが声を上げて10年。貧困が可視化され、社会問題化し、着実に仲間は増えている。さらば貧困! これからもつながりを広げ、行動する」との集会宣言を採択した。

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