2017年11月24日 1503号

【2018年4月 労働契約法「無期転換ルール」前に グローバル企業の脱法解雇を許すな 有期労働者の無期雇用転換を】

 改正労働契約法に基づいて、有期雇用労働者の無期雇用への転換が本格化する来年4月を前に、グローバル企業らが無期への転換を拒む雇い止め=脱法行為を行っていることが次々と明らかになった。非正規雇用の温存を放置して、何が「働き方改革」か。

無期転換5年ルール

 2012年8月の労働契約法改正によって、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、当該労働者に無期労働契約への転換申し込み権が与えられることとなった(第18条)。いわゆる「無期転換5年ルール」である。

 13年4月1日以降の有期雇用契約に適用され、来年4月1日から、無期雇用転換申し込み権を持つ非正規労働者が大量に発生することになる。申し込みがあれば雇用主は拒めない。リーマンショック後の08年から09年、80万人ともいわれる非正規労働者が雇い止め解雇にあった派遣切り≠フ社会問題化に対して、更新を繰り返す有期雇用労働者の雇用を安定化させることが法の趣旨とされたものだ。

トヨタやホンダの脱法

 しかし、トヨタやホンダなど大手自動車メーカーは、期間従業員の無期雇用契約への転換を免れるために雇用契約期間の変更を行っていることが明らかになった。

 改正法では、企業側の要望を受け「抜け道」が用意された。契約終了後から再雇用までの「空白期間」が6か月以上あると、それ以前の契約期間はリセットされ、通算されない。これを自動車各社が利用しているのだ。

 トヨタは2015年、期間従業員の空白期間をそれまでの1か月から6か月に変えた。ホンダ、日産、ダイハツ工業も13年に空白期間を3か月から6か月に変更した。

 自動車業界の期間従業員は、半年程度の契約を繰り返して働き続けることが多い。トヨタでは2年11か月でいったん雇い止め。労働者は「空白期間」後に再雇用の連絡を受けるために往復はがきを会社に出しておく。会社側も経験者は使い勝手がいいからと、期間が過ぎたら「そろそろ来ませんか」とそのはがきを送る。こうした労働者の使い回しが常態化している。

 日産の期間従業員は連続で4年11か月まで、トヨタ、ダイハツ、ホンダは連続2年11か月か、3年まで働ける。例えば、期間従業員が2年11か月働きいったん退社、6か月未満で再契約し、2年1か月を超えて働けば無期雇用転換申し込み権を得られる。しかし、空白期間を6か月にすれば、通算でどれだけ長くなっても無期転換を求められない。

 自動車大手8社すべて空白期間を6か月としており、期間従業員が無期雇用転換申し込み権を得ることはできない。各社の広報は、この理由に労働契約法の改正を挙げる。

 もちろん無期雇用に転換したとしても、ただちに通常の正社員になれるわけではなく、労働条件は変わらない。だが、無期雇用で職を失う心配がなくなれば、有給休暇の権利行使や労働組合への加入、労働条件の改善意欲が湧く。常に労働者を不安定な状態にして服従させるグローバル資本にとっては、何としても有期のままにしておきたいのだ。


東大では5300人雇い止め

 国立大学法人や私学においても無期雇用転換を骨抜きにする動きが起きている。

 東京大学では、当局がパート勤務の非正規教職員5300人に対し、5年上限で雇い止めにする制度を作ろうとしている。労働組合が抗議したが、団体交渉でも姿勢を変えず、来年4月大量雇い止めの可能性が出ている。

 現在86ある国立大学全体で少なくとも10万人以上の非常勤教職員が働く。他の大学でも同様の動きが出ており、東大の対応が正当化されれば、数万人の雇用に影響が及ぶ。

無期雇用が原則だ

 無期雇用を増やすはずの法改正が新たな解雇を作り出す。そもそも、根本問題は「有期労働」という労働形態はあってはならないということだ。

 有期雇用そのものは労働者に何のメリットもない。EUなどでは、基本は無期雇用で、有期労働者を雇用する際には、なぜ有期でなければならないかの理由を求められる「入り口規制」が設けられている。日本でも、有期雇用を例外とする規制条項を盛り込ませる闘いが不可欠だ。

 現在、有期雇用労働者は1500万人。うち3割が同じ企業で5年を超えて働いている。来年4月には、400万人以上が無期雇用転換申し込み権を手にする計算になる。これを前に、有期雇用労働者の雇い止めや経営者による空白期間の押し付けなど様々な労働紛争の可能性が出てくる。その権利行使などまったくできないブラック企業も多数あるだろう。

 安倍政権が「非正規労働者の労働条件向上」を口にするのなら、トヨタをはじめとするグローバル企業や東大当局の身勝手な脱法「雇用ルール」を否定し、無期雇用転換を保障しなければならない。

 有期労働者の無期雇用転換は全労働者の課題である。

 
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS