2018年01月05・12日 1509号

【「ニュース女子」に「重大な放送倫理違反」―BPO/沖縄ヘイトの拡散を許すな/東京MX前で抗議続く】

 東京MXテレビ「ニュース女子」がウソとデマで沖縄の基地建設反対運動を侮辱した問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は12月14日、適正な考査(放送倫理上の問題がないか等のチェック)をせずに番組を放送した点でMXには「重大な放送倫理違反があった」とする意見を公表した。

 委員会が違反として指摘するのは、(1)抗議活動する側への取材の欠如を問題としなかった(2)「救急車を止めた」との放送内容の裏付けを制作会社に確認しなかった(3)「日当」という表現の裏付けを確認しなかった(4)「基地の外」とのスーパーを放置した(5)侮蔑的表現のチェックを怠った(6)編集が済んだ完成版での考査を行わなかった、の6点。

 その上で、「考査は“放送の自主・自律を守る砦(とりで)”であり、“放送の矜恃(きょうじ)を守る砦”でもある。考査が機能しなければ、民主主義社会における放送の占める位置が脅かされる。今回の放送で、砦は崩れた。修復を急がなければならない」と促している。

 同日夜、東京・麹町のMX本社前で行われた抗議行動では、「BPOの意見が出たことを喜びたい。こうやって抗議を続けてきたことも影響したはず」「番組の内容に踏み込んで分析。私たちが指摘してきた批判点をほぼ認定した」「独自の現地調査・聴き取りもしっかり行っている」と歓迎する声の一方で、「基地に反対する市民を貶(おとし)めるため意図的に制作されたことは明らか。BPOが制作意図に言及していないのは残念で、怒りを感じる」と沖縄ヘイト糾弾の視点が欠けていることへの指摘もなされた。

 BPOの記者会見に出席したジャーナリストの安田浩一さんは「印象に残ったのは、検証委員会委員長の『放送してはいけないものを放送してしまった』という言葉。MXに対し、さらに追及の声を上げていく必要がある。ただ、問題の本質は『考査』ではない。なんでこんな番組を作ったのか、制作会社の責任は大きい」と語気を強めた。

 東京MXはBPOの意見を受け、「考査体制の見直しを含め改善に着手している。真摯に受け止め、再発防止に努める」とコメント。行動参加者から「訂正も謝罪もない」「MXは“番組に虚偽はなかった”と主張していた。それについてどう考えるのか。改善に着手で済む話ではない」と怒りがぶつけられた。

 MX前行動を呼びかけてきた「沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志」の川名真理さんは「米軍ヘリの部品が落下した保育園の『自作自演』説を吹聴しているのは、『ニュース女子』に登場していた人物。MXが訂正・謝罪しないことで、彼らのデマが市民権を得てしまう。デマやヘイトの罪深さを改めて認識し、拡散を防がなくてはならない」と訴えた。

 米軍ヘリから窓を落とされた小学校にも「基地のおかげで経済発展しているじゃないか」といった誹謗中傷が相次いでいる。“表現の自由“に名を借りて、沖縄への偏見と蔑視に貫かれた虚偽の言説を流布させることは断じて許されない。

 デマ放送から1年。「市民有志」は1月11日にも東京MX本社前で抗議行動を行う(11〜13時―予定)。

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