2018年01月19日 1510号

【議会を変える マイナンバー 不服従が強制止めた 京都府向日(むこう)市議会 杉谷伸夫】

 昨年7月の1486号本コラムで、市町村が事業者に送る従業員の住民税額決定通知書に個人番号(マイナンバー)を記載するよう、政府が市町村に強制している問題について書きました。会社から個人番号の提出を求められても、イヤだと断っている人の個人番号も、昨年5月には本人の知らないうちに記載されて、勤務先に送られました(強制に従わず、記載しなかった市町村もありました)。

 ところが12月、政府は地方税法施行規則を改正し、住民税額決定通知書を「書面により送付する場合には、当面マイナンバーの記載を行わない」こととしました。住民、事業者、市町村からの批判が、政府による「不合理のごり押し」を断念させた成果です。

 個人番号の記載は、個人番号が本人の了解なく事業主に知られる問題の他、漏洩の危険や事業者による管理の負担など多数の問題が指摘されていました。政府の強制に対して、住民税の徴収は自治事務(自治体の固有の仕事)であることから、こうした危険や問題を回避するために個人番号を記載しない=「不服従」の対応をする市町村が続出しました。東京都や埼玉県、山口県では大多数の市町村がマイナンバーの一部または全部を記載しませんでした。

 また京都府の木津川市議会や向日市議会など各地の市町村議会も、個人番号記載欄の削除を求める意見書を国に提出しました。事業者側も昨秋、経団連が「個人番号の記載を不要とすべき」との提言を出していました。誰にとっても何のメリットもない不合理な政府の押しつけは、市町村が不服従で抵抗し、いわば国民の総スカンを食らって頓挫したといえます。

 政府は個人番号制度、とりわけ個人番号カードの普及にやっきになっています。全住民を固有の番号で管理できるようにするためです。しかし実は思うように進んでいません。昨年8月末の最新の政府公表数値で、個人番号カードの交付総数は1230万枚、交付率9・6%にすぎず、新規交付数は減り続けています。政府がいくら全住民に所持させたいと考えても、個人の人権が何より優先される憲法の下では、強制できないのです。しかし個人よりも「公益及び公の秩序」の優先を明記した自民党憲法改正草案(2012年決定)の下では「公益」の名による強制が起こりえます。絶対そのような社会にしてはなりません。

 「不合理への服従」を拒否し、個人の尊重、地方自治を守る活動を、今年も市民の皆さんとともに前進させていきたいと思います。
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