2018年02月02日 1512号

【不要なリニアに9兆円/森友、加計とはケタが違う「アベ友」案件/究極の国家財政私物化の闇】

 2014年10月に事業認可され、長大トンネルや駅の非常口など難航が予想される部分から工事が始まったリニア中央新幹線。昨年12月、工事を受注した大林組、鹿島、清水建設、大成建設の大手ゼネコン(総合建設業)4社が東京地検特捜部・公正取引委員会の強制捜査を受けた。4大ゼネコンの間で工事契約の「受注調整」(談合)をしていた疑いである。だがこの事態は起こるべくして起きたものだ。なぜならリニア新幹線事業は初めから安倍と「お友達」らによる利権事業として始まったからである。

安倍の後見人・葛西

 自分の存命中にリニアの完成を―そう執念を燃やす葛西敬之(JR東海名誉会長)は、国鉄分割民営化によってJR東海の取締役となった。国鉄時代は職員局長として、分割民営化に反対していた国労組合員らの首切りに直接関与した。警察を監督する国家公安委員在任中には、レイシスト集団・在特会を「新しい市民運動」などと持ち上げた。経済界内部の「アベ友財界人」による安倍支援組織「四季の会」の立ち上げにも関わった。

 一貫して安倍を支え「首相の後見人」を自認。誰もが認める「アベ友」右翼だ。今もJR東海に君臨し、恐怖支配を続けている。



 リニア新幹線は当初、建設費を全額JR東海が負担する民間事業とされた。だが1988年、葛西(当時常務)はすでに「建設費の3分の1は国費が必要。ナショナルプロジェクトとして実施しなければならない」と述べている。

 安倍と葛西が初めからリニアを国策にするつもりだったことは、2014年の事業認可が全国新幹線鉄道整備法(国が建設主体となる「整備新幹線」建設のための法律)に基づいて行われたことからも明らかだ。

 政府はその後、リニアの大阪延伸を前倒しする目的で、財政投融資(財投)資金の投入を目指す。だが、JR東海は財投の引き受け機関でないため法整備が必要だった。2016年11月、鉄道・運輸機構を財投機関にできるよう鉄道・運輸機構法が改定される。財投機関となった鉄道・運輸機構が資金を国から受け入れ、JR東海に又貸しされた。投入された財投資金は3兆円で、JR東海が見積もった建設費9兆円の3分の1。葛西の狙い通りになった。森友・加計学園問題と同じ国政私物化でも金額はケタ外れだ。

 ネット上では、「リニアは大手ゼネコンの高い技術力が必要だから高額でも仕方ない」「財投は融資でいずれ返済されるから問題ない」と、安倍擁護のコメントがあふれる。だが高い技術力が必要なら何をしてもいいわけではないし、リニアは当時の山田佳臣JR東海社長(現会長)自身「絶対にペイしない」と認めたいわく付きの事業なのだ。事業失敗で財投が返済できなくなれば、税金か運賃値上げでツケは市民に回される。

世紀の愚策、事故も

 反対運動の市民らが懸念していた事故も起き始めた。12月15日、長野県中川村の県道59号線で道路脇の斜面が崩れた(地図参照)。迂回路は県道22号線の1本のみ。リニア走行ルートに当たる大鹿村の村民は、村内外を結ぶ重要道路が寸断され不便な遠回りを強いられている。原因はトンネル工事に伴う発破作業だ。この程度のこともまともにできないゼネコンのどこに談合を正当化できるほどの「高い技術力」があるのか。

 「リニアは少し軌道がずれただけでも走行できなくなる。完成などするわけがないし、できたとしても地震が起きれば新幹線より先にリニアが止まる可能性もある」。公共事業の融資審査の経験もある政府系金融機関OBはこう証言する。

 東日本大震災当時、太平洋側の路線がすべて寸断される中で、根岸製油所(横浜市)から東北への燃料輸送の大役を担ったのは新潟など日本海側の在来線だった。災害時に鉄道が輸送ルートとして機能するためには既存の路線とつながっていることが重要だ。災害に弱いばかりか既存のどの路線ともつながらず、貨物輸送もできないリニアが非常時の輸送ルートとして機能することは絶対にない。「東海道新幹線が災害で寸断された際の代替路線としてリニアが必要」というJR東海の説明はすでに崩れている。


中止させるチャンスだ

 1964年に開通した東海道新幹線は、当初1972億円と見積もられていた建設費が最終的に2倍の3800億円まで膨れあがった(しかも国鉄は当初からこれを知りながら隠蔽した)。今回のリニア談合も、そもそもJR東海の示した予定価格が安すぎることが背景にある。建設費が9兆円で収まる保証はどこにもなく、東海道新幹線と同様、2倍と考えると最終的に20兆円ほどに膨れあがることも容易に予想できる。

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 リニア建設は始まったばかりで本体工事には着手していない。違法談合、莫大な国費投入による市民への負担転嫁、環境破壊、地震対策など問題だらけ。中止させるには今がチャンスだ。    (C)
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