2018年04月27日 1524号

【日銀黒田総裁57年ぶりの2期連続就任 アベノミクス継続は市民生活破壊】

 改ざん・隠ぺいだけでなく内政全分野で厳しい批判にさらされている安倍首相。だが、事あるごとになおアベノミクスを誇る。もともとアベノミクスはデフレ脱却を最優先課題に出発したが、今もデフレ脱却宣言≠出せる展望はない。日銀と安倍政権が掲げた「2年で物価上昇率2%の実現」目標は6回も先送りされ、失敗は明らかだ。

 ところが、そのアベノミクスを支えてきた日銀の黒田総裁が4月9日再任された。2期連続の総裁就任は57年ぶりという異例の措置だ。そこに見えるのは、「日銀に簡単に出口に向かわせない」(3/12朝日)と、何が何でもアベノミクス継続に執着する安倍政権の意図である。黒田続投によって、失敗の上にさらに失敗が重ねられ、市民は今まで以上に苦しめられる。

失敗した異次元金融緩和

 黒田総裁がとった政策は、アベノミクスの看板とされた「異次元の金融緩和」というものだ。出口≠ノ向かわせるとは、その異次元の金融緩和を転換して伝統的な金融政策に戻すことをいう。異次元の金融緩和、伝統的な金融政策とは何か。

 金融政策は、本来、経済の安定や完全雇用の実現・維持などが目的とされる。その中心に金利政策があり、景気が悪くなると金利を下げ、景気が過熱しそうになると金利を上げる操作をする。これが伝統的な金融政策だ。

 異次元の金融緩和とは、日銀が国債を大量購入して資金供給量を2年で2倍にするなど、過去の政策とは質も量も次元が異なる金融緩和を意味する。2013年に黒田総裁が導入したものだ。

 日銀は民間銀行から国債を買い、お金を渡す。黒田総裁は、そのお金を大量に支出して金利を下げ、投資が増えて実体経済が伸びることをめざす、とした。お金が増えたことにより、円安と株高はもたらされた。その結果、大企業はぼろもうけし、内部留保も史上最高を更新し続けている。超富裕層の資産も倍増。上位40人の総資産額が過去最高という事態が生まれた。

 庶民にまでお金が回れば個人消費が拡大し経済は活発になるはずだが、そうはなっていない。アベノミクス5年間で、民間平均給与は計50万円以上が失われ、実質賃金も家計消費支出も1990年代以降最低水準だ。貯蓄ゼロ世帯は約1800万世帯(全世帯の35・5%)にも及ぶ。


経済好転せず格差広げる

 民間銀行には大量の資金が集まった。これを貸し出して経済を活性化させることが銀行の役割だが、物が売れないデフレ状態では企業も設備投資せず、貸し出し先が見つからない。日銀の当座預金に預けておけば0・1%の利子を得ることができるため、民間銀行は資金の多くを日銀の口座に預けた。お金は再び日銀に戻ったのだ。異次元の金融緩和でいくらお金をつぎ込んでも、経済全体の好転にはつながらなかった。

 この失敗をおおいかくすために日銀は2016年1月、日銀に預けた民間銀行のお金の一部にマイナス0・1%の金利を適用する(お金を預けることで手数料金をとられる)ことにした。そうすれば、お金は預金ではなく企業への融資に回るはず、との思惑だ。

 だが、実際は企業への融資には回らなかった。中小零細企業を中心に倒産・休廃業・解散は年間計4万件近くと過去最悪の水準が続き、地域経済も一向に改善されない。急激な金利低下は年金生活者などを直撃した。また、民間銀行の主な収入源である利ざや(借りた金利より高い金利で貸し出して得られる利益)も縮小し、預金を断わる例も出てくるなど、一層深刻な影響を与えている。

 異次元の金融緩和は、経済を安定させるどころか、格差を広げ市民の生活を悪化させただけであった。アベノミクス失敗の象徴なのだ。

 異次元の金融緩和は、軍備増強と大企業の利益拡大に寄与する大型予算を組むために国債発行を拡大し続ける条件をつくりだした。財政拡大のしわ寄せを引き受け、政権を下支えする政策である。

 

金融までも私物化

 アベノミクスに今も期待と幻想を抱いている人びとをつなぎとめ、支持率を維持したい安倍にとって異次元の金融緩和は命綱。本来の経済安定のためには転換を迫られているにもかかわらず、出口=%P退には向かえないのだ。

 安倍政権にとって日銀の黒田総裁続投は、異次元の金融緩和を続けアベノミクスを継続させるためにどうしても必要なものだった。それは、日銀の役割である通貨の番人≠ゥら、国(=安倍)にしたい放題させる金庫番≠ノし、金融政策までも私物化することに他ならない。

 今や財界向けメディアも「日銀の役割が変質するなら、円という通貨は信用を失い、そのツケは庶民に回る」(2/28日経)と批判するほどだ。安倍を退陣させ、アベノミクスをすぐに止めさせなければ、市民生活も日本経済もさらにとんでもないことになる。
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