2018年05月04日・11日 1525号

【ミリタリーウォチング/陸上総隊 水陸機動団を新設/“軍暴走”の歴史を忘れるな】

 3月27日、自衛隊が発足して以来最大とも言える組織の改編が行われた。

 現在、陸海空3自衛隊約23万人のうち6割を占めるのが陸上自衛隊だ。この陸自の部隊運用を一元的に担う「陸上総隊」が新設され、その下に離島防衛の専門部隊である「水陸機動団」が発足した。陸自には、これまで北部、東北部、東部、中部、西部の5方面隊があり、各方面総監が防衛大臣の指揮監督下で各方面隊を運用していた。今回の改編により「陸上総隊」は、海自部隊を統括する「自衛艦隊」、空自の「航空総隊」と並び、トップに司令官(陸将)を配置。司令部は陸自朝霞(あさか)駐屯地(東京都練馬区)に置かれ、防衛省直轄で運用される。

 創設以来この「陸上総隊」が置かれてこなかったのは、旧陸軍が権力集中の下で暴走し戦争へ突入した反省からだったが、その反省は投げ捨てられた。

 「水陸機動団」は「日本版海兵隊」とも言われる。長崎県佐世保の相浦(あいのうら)駐屯地にある西部方面普通科連隊を基に2つの連隊を新編成。約2千人態勢で、主に尖閣諸島での有事を念頭に、南西諸島の離島が他国(主に中国を想定)に占拠された際の「奪還作戦」に当たるとされ、第一空挺団(落下傘部隊)などとともに、陸上総隊の直轄部隊となる。隊員の移動にはMV22オスプレイが使用される。

真実隠す自衛隊

 陸自改編スタートから1週間も経たない4月2日、小野寺防衛大臣は、国会での野党の資料要求に「存在しない」と答弁してきた自衛隊イラク派遣の「陸自日報」が見つかったと発表。陳謝する事態となった。昨年には、南スーダンPKOの日報を陸自が隠蔽(ぺい)していたことで稲田防衛大臣が引責辞任していた。

 今回は、ただでさえ公文書の改ざん、隠蔽が大問題になっている真最中。空自、海自からも「なかった」はずの日報が出てくる。文書の「発見」から「公表」まで3か月〜1年以上もかかり、想定を超える危険な事態(迫撃砲着弾など)に見舞われたときの日報はない。全くでたらめな状態だ。真実を隠そうとする自衛隊・防衛省の姿勢があまりにも見え見えである。

 安倍首相が憲法への「明記」を切望する自衛隊の正体は、こんな存在なのだ。

強まる「制服組」発言権

 このような事態に対し、「シビリアンコントロール(文民統制)がなっていない」という批判が集中した。

 自衛隊の最高指揮監督権を持つのは内閣総理大臣だ(自衛隊法)。また、防衛大臣を補佐する権限は、防衛省内部部局のいわゆる背広組(文官)が制服組自衛官より優位を保つと解釈され、参事官制度という「文官統制」がかつては存在、機能していた。このシステムが制服組の政治介入や暴走を抑える一定の役割を果してきたのは事実である。

 だが2015年、安倍政権は自衛隊への統制根拠でもあった「防衛省設置法」12条を改定し、自衛隊の部隊運用を制服組主体に転換。以降、制服組の発言権は強まる一方だ。

 自衛隊日報隠蔽事件も、直近の現職自衛官(3等空佐)による民進党国会議員への「国民の敵」暴言事件も、背景に自衛隊再編、権限集中と強化という経過がある。こうした危険な動きに対し、市民によるシビリアンコントロールを真に強化する必要がある。

藤田 なぎ
平和と生活をむすぶ会
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