2018年06月22日 1531号

【安倍流うんざり作戦/まともに答える気のない国会答弁/嫌気さし関心なくせば安倍の勝ち】

 これが安倍の「うんざり作戦」というものか―。安倍政権の閣僚たちが不誠実きわまる国会答弁を連発している。質問に対し論点をわざとずらし、正面から答えようとしないのだから、まったく議論にならない。メディアは「野党のだらしなさ」ばかりをあげつらうが、本当に批判されるべきは国会や国民を愚弄している政府のほうなのだ。

「ご飯論法」を駆使

 いま話題の「ご飯論法」をご存じか。安倍政権の閣僚や官僚たちが多用する国会答弁術のことである。政府の「働き方」関連法案を厳しく批判している法政大の上西充子教授が命名した。その特徴は、質問の趣旨と違う答えを次々と繰り出し、審議時間を空費させることにある。

 たとえば「朝ご飯を食べたのか」と聞かれたとしよう。実際には朝食(パン)を食べていても、ご飯=白米について聞かれたかのように論点をずらし、「ご飯は食べていない」と答える。あるいは「どこまでを食事の範囲に入れるかは明確ではない」とはぐらかしたり、「朝食は大切だ」など質問には直接関係ないことをしゃべり続ける。

 「いくら何でもそれはないのでは」と思われるかもしれない。たしかにNHKのニュース番組を見る限り、安倍晋三首相や閣僚は質問に対応して答えている。しかし、これは超絶編集技術でそう見せているのである。実際の国会質疑は聞いていてイライラする場面の連続だ。

 特にひどいのが「働き方」関連法案を所管する加藤勝信厚労相の答弁である。高度プロフェッショナル制度(高プロ)をめぐり、次のようなやりとりがあった。

 高プロの対象者には、労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する労働基準法の規定が適用されない。この問題を共産党の小池晃議員が追及した。「連日の24時間勤務を命じても違法ではなくなる。私の言ったことが法律上排除されていますか」と(3/2参院予算委員会)。

 まともに答えれば「排除されていない」だが、それでは「過労死促進制度だ」との批判を勢いづかせることになる。そこで加藤厚労相は「働かせるということ自体がこの制度になじまない」といったはぐらかしに終始した。労働者の命と健康に関わる問題なのに、担当大臣はその場しのぎの対応ばかり。安倍政権の「働き方改革」がまやかしであることがよくわかる。

ネトウヨと同じ手口

 歴史修正主義者がよく使う「一点突破→全否定」の論法も安倍政権の得意技だ。南京大虐殺の例で言えば、記録や証言の中から何らかの間違いを見つけ出し、それを踏み台に「嘘だ、嘘だ、全部嘘だ。虐殺などない」と押し切っていくスタイルだ。

 使用例は次のとおり。安倍首相は森友学園問題に関する答弁の中で、「安倍晋三記念小学校」は朝日新聞の誤報だと言い切った(2/13衆院予算委員会)。さらに日本軍「慰安婦」問題などを列挙し、「朝日」批判を全面展開した。一国の首相が「森友疑惑は“反日”朝日の捏造(ねつぞう)」というネトウヨ並みの印象操作に精を出したというわけだ。

 たしかに、森友学園が財務省に提出した小学校の設立趣意書に記された校名は「開成小学校」だった(財務省が当該文書の黒塗り部分を明らかにしたことで判明)。「朝日」がニュースソースとした籠池泰典前理事長の証言は事実ではなかった。

 では、「安倍晋三記念小学校」はまぼろしだったのか。そんなことはない。5月23日に財務省が公開した改ざん前の決裁文書をみると、校名に安倍首相の名前がついていることを近畿財務局や大阪府が認識していたことがわかる。「安倍晋三」の名前を意識していたがゆえに、対応に苦慮していたのである。

 森友学園との国有地取引に関し、安倍首相は自分や昭恵夫人の関与を頑なに否定してきた。だが、消したはずの公文書により嘘がばれてしまった。そこで「ゴールポストの移動」という裏技を繰り出した。関与とは贈収賄のことを指し、それがなければ辞任する必要はないと言い出したのだ(5/28参院予算委員会)。

 もはや恥も外聞もない。この鈍感力が政治家・安倍晋三の強みなのだろう。

民主主義を壊す者

 産経新聞に阿比留瑠比(あびるるい)という安倍シンパがいる(論説委員兼政治部編集委員)。その阿比留が「モリ・カケ騒動に明け暮れる国会」のせいで、国民は「政治嫌悪」に陥るおそれがあるという趣旨のコラムを書いた(5/25産経)。

 おいおい、話が逆だ。「言論の府」たる国会を悲惨な現状におとしめ、国民の政治離れを助長しているのは安倍政権の側ではないか。

 かみ合わない問答が延々続いたあげく、「議論は尽くした」として強行採決――このようなパターンを何度も何度も見せつけられれば、誰だってうんざりする。それが安倍政権の狙いである。人びとが政治に嫌気がさして、関心を払わなくなってくれたほうが好都合なのだ。

 安倍の延命のために民主主義が死ぬ。そのようなことがあってはならない。 (M)



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