2018年07月06日 1533号

【過労死促進の高プロ仕掛け人 竹中平蔵のグロテスクな本音 働かせ方大改悪強行は許さない】

 「残業代ゼロ・定額働かせ放題」の高度プロフェッショナル制度(高プロ)創設を含む「働き方改革」一括関連法案。とりわけ高プロをめぐるでたらめが次々と明らかになっているにもかかわらず、参院強行採決が狙われている。命を奪う働かせ方大改悪強行を許してはならない。

 高プロの必要性について、安倍首相は「労働者のニーズに応えるもの」と主張し、加藤厚労相も「私もいろいろお話を聞くなかで要望をいただいた」と答弁していた。ところが、実際はわずか5社12人に人事担当者同席で聞き取りしただけ。聞き取りのほとんどが、加藤答弁後に慌てて行われていた。立法が必要とされる根拠もないでたらめ法案を、安倍政権は強行採決しようとしている。

 高プロは、企業が残業や休日労働に対して割増賃金を一切支払わず、労働者を際限なく働かせるもの。間違いなく過重労働や過労死を増加させる。省令の改訂を通じて対象者が拡大されるのも確実だ。

「残業代は補助金」?!

 産業競争力会議(自民党・日本経済再生本部の下部組織)の民間議員であり、経団連とともに高プロ創設の仕掛け人であった竹中平蔵が、なんともグロテスクな「本音」をさらけ出した。

 竹中は6月21日付東京新聞のインタビューで、高プロの必要性を強調する一方で、「時間内に仕事を終えられない、生産性の低い人に残業代という補助金を出すのも一般論としておかしい」と述べた。

 残業しなければ終わらない仕事を課しているのは経営者だ。それを労働者の責任にすりかえて「生産性の低い人」と非難し、当然の残業代さえ「補助金」と呼ぶ。竹中にとって、残業代とは仕事のできない奴のために仕方なく会社が出してやっているムダ金≠ニいう認識なのだ。

 「過労死促進法案との批判がある」という質問に、竹中は「過労死を防止するための法案だ。その精神がすごく織り込まれている」。理由を「年間104日以上の休日の取得、(適用には)本人の同意も要る」と答えた。5月30日に出演した『クローズアップ現代+』(NHK)でも「ほとんど完全週休2日制」などと言いふらしている。

 だが、法案は「年104日以上、4週間で4日以上」の休日を与えるというだけだ。月に4日間休ませれば、そのあとの26日間はずっと働かせることが可能であり、次の4週間の最後の4日間に休みを取らせれば、連続して48日間、1日24時間労働をさせても合法となる。

 竹中は「本人の同意も要る」と言うが、企業からの要求を労働者が拒否することは容易ではない。さらに、労働者が同意を撤回したり、同意しなかった場合に解雇や不利益な扱いを受けたときでも、労働基準監督署は指導を行うことも罰則を科すこともできない仕組みとなっている。よくも「過労死を防止する精神」などと言えたものだ。

グローバル資本を代弁

 竹中は「適用されるのはごく一部のプロフェッショナル。労働者の1%くらいで、高い技能と交渉力のある人たち」と言う。大うそだ。「年収1075万円以上の一部専門職」を対象と宣伝するが、実質的には年収400万円台の労働者も対象に狙われている。

 竹中は前出『クロ現』でも、「(対象範囲は)まだまだ極めて不十分。高プロを適用する人が1%ではなく、もっともっと増えてかないと日本経済は強くならない。個人的には、結果的に(対象が)拡大していくことを期待している」と公言している。

 現状でも過労死や残業代不払いが多発している。規制を取り払い対象を拡大すれば、過労死が一層促進される事態になる。だから、犠牲となった過労死家族の会がもっとも強く反対しているのだ。

 竹中は、このインタビューに東洋大学教授の肩書きで登場している。だが、実は人材派遣大手のパソナグループの取締役会長、オリックス社外取締役であり、グローバル資本の経営者だ。安倍のブレーンであり、発言はその代弁をしたものに他ならない。

世論は成立反対が多数

 竹中は、自身が推進した小泉構造改革によって非正規切り≠横行させ、ワーキングプアを生み出し、現在の格差社会をつくり上げた張本人だ。今度は高プロによって労働者を搾取し尽くし、過労死しても「自己責任」にできる社会にしようと狙う。竹中のような人間の命をまったく顧みない経営者の思うままにさせてはならない。

 共同通信社が5月12、13日に実施した世論調査によると、「働き方改革」関連法案に関して今国会で成立させるべきかについて、「必要はない」が68・4%、「成立させるべき」が20・3%だった。国会審議や過労死家族の会などの反対運動を通じて世論も明確に反対に傾きつつある。

 労働者の命を脅かす一括法案は廃案以外にない。

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