2018年07月20日 1535号

【環境破壊のリニアは違法 ストップで民主的公共交通へ】

738人が提訴

 6月25日、第10回「ストップ・リニア!訴訟」口頭弁論が東京地方裁判所で開かれた。

 同訴訟は、国土交通省のリニア中央新幹線工事計画認可取り消しを求めて沿線住民738人が提訴した行政訴訟だ。充分な議論も尽くされずわずか3年の形式的な環境影響評価(アセスメント)での工事認可には根本的な瑕疵(かし)があるとし、行政不服審査法に基づく異議申し立てを経て2016年5月、訴訟はスタートした。毎回、開廷前には平均150人近くの沿線地域をはじめ全国から集まった人たちが傍聴券を求めて並ぶ。

 訴訟では、環境影響評価法違反の他、特殊な超電導磁気浮上式を採用するリニアが他の鉄道とのネットワーク性を欠く上、高速で3大都市圏を結ぶことにのみ焦点が当てられ地域振興への観点が希薄なことから全国新幹線鉄道整備法(全幹法―注)に違反する、また、事業計画が経営上適切でなく事業遂行能力、輸送の安全性に問題があり鉄道事業法(鉄道法)にも違反するなどを争点としている。

沿線各地で問題噴出

 これまで9回の口頭弁論では、主に東京から愛知まで1都6県に居住する原告によって、意見陳述が行われてきた。JR東海という大スポンサーを持つ大手メディアが、リニア新幹線の本質的な問題点を報道することはほとんどない。しかし、無謀な工事が沿線の住民と環境に与える影響と被害は深刻である。

 例えば、岐阜県東濃地区には日本最大のウラン鉱床が存在し、リニアのルートはその真下を通過する。トンネル掘削で放射性物質を含む残土が排出された場合、その処分先と保管方法はどうするのか、明瞭に示されていない(第3回口頭弁論・意見陳述)。

 静岡県では大井川源流の水量が毎秒2トン減少し、下流地域で使用される生活、農工業用水や生態系を侵害する(第6回)。「日本で最も美しい村」連合に加盟する長野県大鹿村では、片道走行しか不可能な村の狭い道路を最大1日1700台のトラックが通行し、それが工事完了までの長期にわたって続く。村民の生活破壊、観光客の減少が予想される(第5回)。すでに実験線が走行している山梨県では水涸(が)れ、異常出水が起き、騒音や日照権を巡る被害が現実化している(第4回)。都市部においては大深度法(地下40メートル以下の公共的使用に関しては地権者の承諾を必要としない。リニアのために作られた法律ともいわれる)が適用されるが、地盤沈下や地下水の枯渇等の懸念がある(第7〜9回)。

 第10回口頭弁論では原告代理の弁護士が意見陳述を行った。これまでの口頭弁論と求釈明に対して、被告である国側が用意した準備書面が全く答えるものとなっていないこと、そもそも具体的なルート、建造物、施設の位置、形状等がすべて明瞭に提示されていない中で、いかなるアセスが行われ、何を根拠に被告国が事業認可したのかが問われた。それが示されない限り、原告側の原告適格を云々することなどできない。

 今後は被告国側からの反論が予定される。行政訴訟に勝利するのは困難だが、裁判の場に国とJR東海を引っ張り出し、情報開示させることが重要だ。それによってリニア事業計画の不当性と杜撰(ずさん)さが明らかになる。次回開廷日は9月14日。公正な審理をさせるためにも、多く人びとの注目と支援が求められている。

ZENKO分科会へ

 ZENKOin大阪(第48回平和と民主主義をめざす全国交歓会)では「JR31年 分割民営化後の現在(いま)を問う〜ローカル線・リニア・安全問題〜」と題した分科会が開催される(7月29日9時半〜12時半、エルおおさか504)。リニアに3兆円もの公金が投入される一方、北海道等の地方では、地域の足であるローカル線が存続の危機に瀕している。31年前に断行された国鉄分割民営化がもたらした歪みと格差は限界に達している。分科会では現状を検証し、真に民主的な公共交通のあり方を問う場として多数の参加で成功させ、公共交通政策の見直しにつなげたい。

(注)全幹法 整備新幹線建設の根拠でリニア事業認可時に「拡大適用」された法律。新幹線の建設目的を「全国的な幹線鉄道網」形成や「地域の振興」を達成するものでなければならないと規定する。

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