2018年08月10日 1538号

【MX社長が辛淑玉さんに謝罪/「ニュース女子」沖縄中傷番組/ヘイトの先にはジェノサイド】

「和解ではない」

 昨年1月放送の東京MXテレビ「ニュース女子」がウソと偏見で沖縄の基地反対運動を中傷した問題をめぐり、MXの伊達寛社長は7月20日、「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(シンスゴ)さんに謝罪した。

 今年3月に放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会が「人種や民族を取り扱う際に必要な配慮を欠いた。名誉毀損(きそん)の人権侵害が成立する」と認定したことを受けたもの。伊達社長は都内のホテルで辛さんに会い、「深く傷つけたことを深く反省し、お詫びいたします」と頭を下げたという。

 記者会見で辛さんは「ここまでたどり着けたのは、MX前で寒い日も雨の日も抗議活動が続けられたから。一緒に闘ってくれて本当にありがとうと伝えたい」と述べ、「謝罪は受けたが和解ではない。私の出自を使い、デマを流して沖縄の運動を叩く。抵抗できない者にレッテルを貼り、敵として吊るし上げる。その先にあるのはジェノサイド。それがどんなに怖いことか、MXを含めてまだ理解できていない」と危惧を表明した。

 謝罪を受けるにあたって大きな葛藤があった。自分だけが謝罪を受けていいのだろうか。自分が楽になるために、一緒に痛い思いをした沖縄の人びとが外されるのは「受け入れられない選択肢だった」と辛さんは話す。

 しかし、「ニュース女子」を制作したDHCテレビジョン(化粧品大手DHCの子会社)のヘイト映像はネットを通じて世界に拡散している。「本丸はDHC。DHCが悪意をもってやった。これ以上長引かせては傷口が広がるばかり。まずはMXにきちっと詫びを入れてもらい、次の闘いに行きたいと思った」

DHCテレビを提訴

 辛さんは、DHCテレビジョンと番組司会を務めた長谷川幸洋・元東京新聞論説副主幹を相手取って提訴する(7/31提訴)。長谷川元副主幹は今年3月、東京新聞を円満退職した。「デマを流し続けた人物を何の処分もせずに退職させる。東京新聞は一体何を反省したのか」。辛さんは問いかけ、「ヘイトとの闘い、ジェノサイドに流れゆくこの社会の闘い―それは原告たり得る私がやらなければできない。ヘイトで金儲けしないでほしい」と声を振り絞った。

 記者会見には他の「のりこえねっと」共同代表も同席。田中宏・一橋大学名誉教授は「当事者が動くのはものすごくエネルギーを消耗する。辛さんの勇気は大変なこと。当事者がどんな思いで生きているか、社会は知ってほしい」と言葉を詰まらせる。沖縄平和市民連絡会の高里鈴代さんはスカイプ中継で「辛さんをリーダーに据え、沖縄を貶(おとし)めた。沖縄に対する謝罪もあるべきだ。沖縄は『土人』『売国奴』、銀座をデモすると『どぶねずみの行進』と言われた」と告発した。

 MX前で抗議を重ねた「沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志」の川名真理さんは「侮蔑され傷つけられた沖縄の人たちの名誉はどうなるのか。番組の訂正・謝罪が得られるまで納得できない。DHC商品の不買運動や『ニュース女子』放送継続局へのハガキ・アクションも呼びかけていく」と語った。

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