2018年11月09日 1550号

【辺野古埋め立て承認撤回/国交相の執行停止決定糾弾/県民投票条例成立 民意をさらに】

身内≠ナ停止決定の茶番

 名護市辺野古の新基地建設工事で沖縄県が行った埋め立て承認撤回について10月17日、沖縄防衛局は「行政不服審査法に基づき」として国土交通相に撤回取り消しの審査請求と撤回の効力を止める執行停止申し立てを行った。申し立ては、(1)国であっても行政不服審査法での請求は可能(2)撤回で普天間飛行場の危険性除去が遅れ、日本の安全保障体制を脅かす(3)埋め立ては環境に十分配慮し公益を侵害しないなど根拠もなく「問題ない」としたものだ。

 これに対し県は24日、申し立てを却下するよう国土交通相に意見書を送付した。県側代理人弁護士は24日、意見書の内容を説明。(1)行政不服審査制度は私人の救済を目的とする(2)国による同制度の利用は地方自治の観点から問題がある(3)国の機関が国の機関の申し立てを判断するのは公平性に欠ける―と指摘し、申し立ては不適法とした。県が撤回してから1か月半が経過していることも挙げ、効力停止の「緊急性」を否定し、却下を求めた。

 また、26日、全国の行政法研究者が「国民の権利救済制度である行政不服審査法を乱用するもの」と、防衛局の申し立て却下を求める声明を発表した。「国が特別な法的地位(固有の資格)にありながら、一般個人と同様の立場で審査請求や執行停止申し立てを行うことは許されるはずもなく、違法行為に他ならない」と強く非難。同じ政府機関内の申し立てに「中立性・公平性が期待しえない」とした。賛同者は110人(10/26現在)と2015年の同様の声明時よりも増えた。

 にもかかわらず石井啓一国交相は10月30日、不当にも、防衛局の申し立てそのままに撤回の執行停止を決定した。岩屋毅防衛相は「速やかに工事を再開したい」と述べた。

 玉城(たまき)デニー知事は「結論ありきだ。工事着工や土砂投入は断じて許されない」と厳しく糾弾。民意無視の工事再開など断じて許されない。


本部(もとぶ)で土砂搬出阻止へ

 オール沖縄会議は10月26日、那覇市内で国の対抗措置への抗議集会を開き、約350人が声を上げた。同日、辺野古への土砂搬出港のある本部町でも、本部町島ぐるみ会議主催「塩川港からの土砂搬出を許さない!」緊急学習会が開かれ、130人が集まった。

 行政法が専門の徳田博人琉球大学教授も、声明について「わずか1週間余りで全国の25%の行政法学者から賛同が集まった」と報告。また、沖縄平和市民連絡会・北上田毅さんは、塩川港から埋め立て土砂の搬送を許さない取り組みとして、沖縄県と本部町に対し、県管理の本部港を使用させないこと、土砂搬出で26万台のトラックが集中する問題や無秩序な採掘に規制をかけさせることなど、市民側が行政をしっかり監視し要求する重要性を訴えた。

 本部町島ぐるみ会議は、今後も町に粘り強く働きかけ、国の土砂投入工事を絶対阻止する覚悟を述べた。

県民投票は来春までに

 有効数9万2848筆が集まった「辺野古新基地の賛否を問う県民投票条例案」は10月26日、10月定例県議会の最終本会議で「賛成」「反対」の2択で問う与党案を賛成多数で可決した。条例公布から6か月以内に投票を実施すると定められ、玉城知事が期日を定め、来春までに県民投票が行われる予定だ。

 知事は「法定署名数を大きく上回る署名の提出があったことは辺野古基地建設に対する県民の多大な関心を示したもの。県として市町村と連携を図り成功させたい」と意気込みを述べた。翁長雄志(おながたけし)前知事も生前、県民投票に対して大きな期待を寄せていた。県は条例公布日に合わせ、「県民投票推進課」を新設し投票を呼びかける広報活動や市町村との調整に入る。

 一方、先立つ17日、石垣市議会で県民投票条例案に反対する意見書が可決されるなど、けん制の動きもある。県議会本会議で条例案に反対、退席の態度に出た自公維新らは、知事選に敗けてもなお民意の高まりを妨害することに躍起だ。改めて辺野古反対が圧倒的に示されれば、民意を背に玉城県政はさらに新基地阻止に勢いづくからだ。

 条例可決を受け、県民投票条例制定署名を若者中心で取り組んだ「県民投票の会」元山仁士郎代表は「率直にうれしい。県民全員で考える機会を設けることが実現でき、誇らしい」と喜ぶ。「今後は(米軍基地の整理縮小などの賛否を問う)1996年の県民投票を上回る投票率を目指したい」と成功へ抱負を語った。知事選、那覇市長選と若者がつくったうねりをどうつないでいくか、再び、辺野古新基地ノーを全県民が示す機会がやってくる。 (A)

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