2019年02月08日 1562号

【年1mSv(ミリシーベルト)の権利性 主張/許されないデタラメ「防災体制」/井戸川裁判第13回口頭弁論】

 元双葉町長の井戸川克隆さんが「民をだまし大地と海を汚した東京電力と政府の責任を問う」と起こした裁判(福島被ばく訴訟)。第13回口頭弁論が1月23日、東京地裁で傍聴席を埋めて行われた。

 原告側は、事故後の応急対策をめぐる犯罪とも言える対応を争点にあげた。国が避難基準を年20mSvとして帰還強要したこと、低線量被ばくリスクの無視を前提とした測定や県民健康管理調査を実施したことは「被害者が有する年1mSvの権利性(自主決定権)を否定したもの」と批判。長期避難生活者への支援を災害救助法の範囲に限定したことに対しても「加害者責任を無過失責任にとどめることを目的とした対策で誤りだ」と追及した。

 衆院第一議員会館で開かれた報告集会には約80人が参加した。古川元晴弁護士は「国側は新たな準備書面を出し、津波対策のところで勝負したいようだが、めぼしいものはない」と切り捨て、ICRP(国際放射線防護委員会)の線量限度について「権利を創設するのではなく逆に権利を制限するよう定めた。1mSvの基準はそれ以下の線量はお許しくださいという『規制免除』の考え方から設定された」と指摘した。

 井戸川さんは、双葉町の当時11歳の少女が頸部測定で「100mSv被ばくしていた」とする新聞報道に触れ、「あの子も正しく避難指示がなされていたら大変な被ばくを避けられた。残念で悔しい。国は、私や県知事を連れて謝罪に行くぐらいの責任があると思う」と述べた。

 強調したのは「防災体制」のデタラメさ。「緊急時には国の原子力災害現地対策本部と自治体の対策本部で合同対策協議会が設置され、そこが指令塔となって対応することが決まっていたが、一度も開かれなかった。地元本部長の私には情報も全く知らされなかった」と怒る。事故を想定した防災訓練は実施していたが、実際には避難用バスの手配さえ不可能だった。「事故後も他自治体の訓練は何ら変わっていない。原発立地では『避難計画ができてよかった』という声があるが、とんでもない。そんな計画や訓練など非現実的、というのが福島の教訓だ」

 双葉町から都内に避難した「井戸川裁判を支える会」共同代表の亀屋幸子さんは「東電刑事裁判をずっと傍聴してきた。被告は何一つ真実を語らなかった。事故後、町民約7千人のうち700人が亡くなっている。事故さえなければ、楽しくのんびり過ごし、もっと長生きしていたはずだ。中年の方が心筋梗塞やがんで亡くなったとよく聞く。東海第二原発の事故で首都圏のみなさんに双葉のような苦しみをさせたくない。再稼働は絶対許してはならない」と呼びかけた。

 会場から質問・意見が相次ぎ、予定時間をオーバーする活発な報告集会となった。次回は4月24日、次々回は7月10日。いずれも10時30分から103号法廷にて。

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