2019年03月22日 1568号

【イラクと日本/社会サービスは崩壊状態 機能不全続く政府/電力労働者は常勤雇用を勝ちとる】

 イラクの内政は「機能不全に陥っている」(2/25日経)状態だ。昨年10月に発足したアデル・アブドルマハディ内閣はいまだに閣僚2人を任命できていない。イスラム政治勢力の政党やクルド民族主義政党などが米国やイランなどと結びつきながら、利権争いに明け暮れているからだ。

 2003年の米軍によるイラク占領から16年もたっているのに、世界有数の産油国イラクは石油からの収益があるにもかかわらず、社会サービスは崩壊状態である。いまだに電気が来ず、上下水道が壊れたまま。医療も教育も水準はどんどん低下している。

 しかしこのようなイラクで、労働者は労働条件の改善を要求して立ち上がっている。

教員ストに共感広がる

 2月17、18日の2日間にわたってイラク教員労組5万人が全国14のすべての州で全面ストライキに突入した。現地では「大部分の学校ではストライキの1日目の今日は生徒は誰も来ていないようである」と報道されている。教員は公務員の中でも極めて低賃金に抑え込まれてきた。賃上げと待遇改善を要求している。

 それとともに、教員労組のヤシーン・モハンメドは「何百という学校が泥壁の粗末なものであったり、(教室不足で)1日3交代制をとっている学校さえある」という状況に「まともな校舎を作れと要求している」と語っている。

 このストライキには社会的反響も大きい。ツイッターでは「これは教員の当然の要求だ」、「教員は国家の圧力だけでなく、生徒の親からも殺害の脅迫を受けるなど無謀な圧力にさらされている」という意見が拡散されている。厳しい実態の中で立ち上がった教員のストライキに市民から次々に連帯が表明されている。

勝因は要求・組織・団結

 電力労働者と医療労働者が大きな勝利を勝ち取った。3月初旬、アブドルマハディ内閣は、電力産業の3万3千人の非常勤契約労働者と常勤雇用契約を結ぶと決定した。1週間前にストライキを宣言した医療労働者の要求も受け入れると発表したのだ。

 イラクの非常勤契約労働者は何年働いても常勤雇用を拒否され、賃金は月にわずか30万ディナール(約2万8千円)に過ぎない。常勤雇用なら、教員でさえ50万ディナール、主要産業の石油労働者なら100万ディナールである。しかも社会保険給付は受け取れず、休日も、危険手当、育児手当、扶養手当も退職金もないという無権利状態だ。

 非常勤契約労働者たちは、デモに出て、そのあと職場の前や公共の広場でテントを立てて座り込みを行い、他の分野の労働者との連帯を追求した。さらに、昨年夏、電力や上下水道などの社会サービスを要求する大規模な抗議行動を行ったバスラ市などからの連帯を得ている。

 労働者の勝利の要因は、「明確なスローガンと要求と組織化と団結」(イラク労働者共産党サミール・アデル書記長)である。常勤雇用要求を徹底し、創意ある組織化を展開し、イスラム政治勢力の切り崩しに屈しなかった団結の勝利だ。権利を要求し闘うイラク労働者と連帯しよう。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS