2019年04月05日 1570号

【みるよむ(512) 2019年3月23日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクの社会サービスはどこに行った?】

 イラクには、政府があり議会があり行政機関がある。ところが社会サービスは崩壊している。首都バグダッドでさえ雨が降ると排水されずに泥沼状態になる。一体どうなっているのか。2019年1月、サナテレビはバグダッド市民にインタビューを行った。

 最初に登場する市民は「イラクでは問題が山積みだ。社会サービスがなくなってしまった。汚職と行政機関の怠慢がその理由だ」と厳しく批判する。「雨が少ないイラクで雨が降って喜んだのに、雨水による被害で住民の声は呪いの言葉に変わった」と続ける。排水設備が壊れているのだろう、「バグダッドが泥沼みたいになった」のである。

 首都バグダッドでさえこれほどひどい実態だが、政治家は「国民の利益のことを考えている」などと平然と言う。メディアに登場する政府当局者について、市民は「砂漠を天国のようなところだと言い換えている」と怒りを隠さない。

 別の市民は「労働者が500万人いるが、仕事は200万人分しかなく、特に就職できない若者が多い」と非難の声を上げる。

 2003年の米軍占領からこの3月で16年になる。ところが、いまだに下水も清潔な飲料水もない状態が続いているのだ。「石油をもたらす油田はあるが、市民のための社会サービスはない」と語る男性は、豊かな石油資源から政治家が汚職で私腹を肥やす一方、市民生活の惨状が放置されていることを批判している。

「砂漠は天国」のやり口

 グローバル資本が支配する米国や日本でも同じような事態が進行している。トランプ政権も安倍政権も、富裕層の利益だけを増やし、大軍拡する一方で教育や社会保障を切り縮めている。安倍首相は、経済が悪化し労働者の収入も減っていることをウソの統計で隠してきた。それこそ砂漠を天国のようなところだと言い換える≠竄闌だ。

 バグダッド市民は「行政当局とバグダッド州、社会サービス機関に、実態にきちんと注目するように求める」と述べる。水道や下水、教育、医療といった社会サービスの崩壊に議会も政府も何の対策も取っていない現状を変えるため、サナテレビは市民の声を集め、訴えを広げている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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