2019年04月12日 1571号

【5・3兆円の軍事費いらない F35A 2機で保育所200以上】

 2019年度軍事予算は5兆2574億円(前年度比663億円増)。5年連続で過去最高を更新した(図3)。



 南北朝鮮・米朝首脳会談など東アジアで進む緊張緩和は劇的だ。大規模な米韓軍事演習はなくなり、あれほど大騒ぎしていたミサイル想定の住民避難訓練もどこへやら。本来なら、軍備縮小―自衛隊縮小・解体への大々的な論議をまきおこすべきなのだ。

 ところが、安倍政権は12月、今後5年間に総額27兆4700億円(年5兆5千億円)を費やす「中期防衛力整備計画」を閣議決定した。青天井の大軍拡へと突き進んでいる。

先制攻撃の高額兵器

 19年度軍事予算の際立った特徴は、先制攻撃のための兵器・装備が続々と導入されることだ。

 最新鋭ステルス戦闘機F35Aは6機681億円(1機114億円)。関連経費407億円を加えると1088億円に達する。このF35に搭載するのが射程500`の長距離巡航ミサイルJSM(73億円)だ。また、現在配備されているF15を108億円かけて改修、射程900`の空対地、空対艦ミサイルを積めるようにする。これらは「スタンド・オフ・ミサイル」といわれる巡航ミサイルで、戦闘機がレーダー圏外から敵基地を攻撃できる先制攻撃能力を持つことになる。

 護衛艦「いずも」の空母化(調査費0・7億円)でF35Bが搭載されるようになれば、攻撃範囲は地球の裏側≠ノまで広がる。さらに高性能の「島嶼(とうしょ)防衛用」高速滑空弾の研究(139億円)、極超音速(マッハ5)誘導弾の研究(58億円)も盛り込まれた。

 先制攻撃のためには「敵」からの反撃に備えなければならない。それが地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」だ。19年は1基1757億円。もう1基に諸経費を含むと総額は6000億円に上る。その他、無人機グローバルホーク(71億円、関連経費101億円)、早期警戒機E2D(9機1940億円)など、戦争法に対応する新兵器のオンパレードだ。

 自衛隊の侵略拠点化をめざす基地整備については、沖縄の民意を無視する辺野古新基地建設(「普天間飛行場の移設」)に707億円、南西諸島への自衛隊配備強化に197億円が計上された。

軍事費を福祉、教育へ

 東アジアの平和に逆行し緊張をかきたてるだけの武器も戦争する軍隊もいらない。異常突出した巨額の軍事費は、ただちに社会保障や保育・教育に回すべきだ。

 19年度の社会保障予算では、高齢化に伴う社会保障費自然増分6000億円が1200億円も削られた。生活保護費(生活扶助基準)引き下げで18年から3年間で160億円が削減され、75歳以上の低所得者向け医療保険料特例措置の廃止による削減額は170億円にのぼる。1757億円のイージスアショア導入をやめるだけで減らさずに済む。保育園落ちた≠ヘ今年も大問題だ。昨年4月の待機児童数1万9895人に対し、90人定員の保育所(開設費国庫負担分1億2000万円)を待機人数分221か所をつくるには約265億円。F35A2機分を回せばいい(図4)。



 安倍政権成立から7年。軍事費は12年度予算より5400億円も増えた。7年前に戻すだけで、全国の小中学校の給食費無料化に必要な財源5120億円(16年内閣府資料より)が生まれる。

 安倍は「給付型奨学金」導入を自慢する。だが、大学・短大などで「奨学金」の名のローンに苦しむ学生133万人に対し、19年度の給付は4万人140億円にすぎない。辺野古(707億円)を中止すれば、今すぐ20万人に給付できる。総工費2兆5000億円ともいわれる埋め立ての中止を決断すれば、高等教育無償化にも道が開ける。

 軍事費を削って福祉、教育に回せ。今声を上げる時だ。

 
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