2019年04月12日 1571号

【消費税増税は撤回だ(1) 生活も社会も壊す2019予算 貧困化の進行に世論もノー】

 2019年度政府予算が3月27日、成立した。異常な軍事費増の費用捻出のため消費税増税が画策されている。ところが今、増税推進派からも10月実施に疑問の声が出るようになった。なぜか。消費税増税の問題点を3回にわたって探る。

 昨年10月、日本経済新聞の世論調査結果は驚くべきものだった。消費税増税賛成が47%となり、反対の46%を上回ったのだ。それまで賛否を問うた調査ではほとんどの場合、反対が多数を占めていた。安倍首相が消費税10%引き上げを閣議で表明した直後のことで、安倍政権はこの結果に安堵したに違いない。

 ところが、3月の調査結果を見ると、朝日新聞(3/19)で反対55%、賛成38%、産経新聞とFNN(3/19)でも反対53・5%、賛成41%と、消費税増税反対は過半数を超えた。反対は確実に増えている。

 最近発表された経済指標は「景気の悪化」を示している。当然、市民もそれを実感しており、産経・FNN調査では「景気回復の実感なし」が83・7%にも達した。この状況で消費税増税が強行されると、経済や社会が壊れていく。

低迷する経済

 内閣府は3月7日、1月の景気動向指数による経済状況が「下方への局面変化」にあると発表した。この表現は、8%への消費税引き上げによる影響で経済が低迷していた14年11月以来のことだ。昨年9月から12月までは「足踏み」と表現していた。これよりさらに悪化したのだ。

 景気をめぐる公式見解は月例経済報告になる。3月20日発表の報告では「このところ輸出や生産の一部に弱さもみられるが、穏やかに回復している」とされた。茂木敏光経済再生相は「景気回復が戦後最長を更新した可能性があるという認識は変わっていない」と、経済悪化を隠したい安倍を代弁して言いつくろったが、報告の眼目は「輸出や生産の一部に弱さ」という文言が付け加えられたところにある。「政府、景気判断引き下げ」(3/21朝日)と報道されたように政府自身も実質上、経済状況悪化を認めたのだ。

 世帯の収入を見ても大きく減少しており、人びとは生活苦に直面している。家計の実質消費支出について18年の平均をみると、13年と比べて年間25万円も減少。5年連続で減少した(表1)。安倍政権発足以降の国民生活悪化はここまで深刻になっている。



 消費税率10%に引き上げた後の影響について、大和総研は、年収500万円の片働き4人世帯の場合に実質可処分所得が18年409万円から20年405万円に減少、同じく年収300万円の場合には261万円から259万円に減少と試算している。

 こうした経済状況を無視して増税すれば、生活破壊と貧困化が進行することは誰でもわかる。昨年12月まで内閣官房参与だった藤井聡京大教授でさえ「(増税が)国民を貧困化させ、日本を貧国化させ、そして、挙げ句に日本の『財政基盤』そのものを破壊する」と言うほどだ。

引き上げれば大打撃

 14年4月、5%から8%への消費税引き上げ時の影響がどんなものだったのか。家計の実質消費支出で見てみよう。

 増税前、13年の実質消費支出平均363・6万円が14年3月には402・8万円に一時急増。駆け込み需要の影響だ。その後、4月346・6万円、5月331・4万円と激減した(表2)。この大変動に、政府も「(個人消費に)駆け込み需要と反動減といった大きな需要変動が生じ、景気の回復力を弱めることとなった」と言わざるをえない。8%への増税の影響は、安倍政権の予想を超えていた。



 「一時的な変動」であればいずれ落ち着いていくかもしれない。ところが、影響は5年近く経った現在も続いており、増税前の13年の水準にも達していない。世論調査の「景気回復の実感なし8割超」の背後には、市民の深刻な生活悪化の実態がある。

 この現実を直視すれば増税は不可能だ。ところが、安倍政権は、駆け込みと反動減さえ解消すれば増税可能と判断している。対策として「軽減税率」や「ポイント還元」など愚策を打ち出し、「増税分をすべてお返しする」とごまかしで乗り切ろうとしている。だが、生活の現実の前にウソは通用しない。増税反対世論が一気に増えているのは、安倍の底の浅さが見透かされているためでもある。

 消費の落ち込みの根本原因は賃金の低迷である。低所得者対策と称して軽減税率を導入したところで何も変わらない。逆に、軽減税率は格差を広げかねない。賃金の引き上げ上げがないかぎり、消費は伸びないのだ。

 次回は、軽減税率の何が問題なのかを見よう。《続く》
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS