2019年04月12日 1571号

【みる…よむ…サナテレビ(513)/2019年3月30日配信 イラク平和テレビ局in Japan/市民社会組織に広がる腐敗】

 イラクでは2003年の米軍占領以後、多数の市民社会組織がつくられてきた。しかし、そのほとんどで資金がなく、不正が横行し、活動の実態がなくなっている。2019年2月、サナテレビはこの問題について市民にインタビューした。

 メディア関係者は「本来は貧困や病気など生活困難の人びとを支援する市民社会組織がきちんと機能を果たしていない」と心配する。それどころか、「重要で絶対必要なものは何も提供しないのにお金だけ取ることが横行している」と言う。

 ある女性活動家は「孤児や夫を失った女性、貧困家庭を支援しているはずの団体が不正な利益を上げている」と告発する。中部ディヤラ州にある慈善組織は「孤児のための募金」として集めた資金を自ら経営する小学校の教員の給与支払いに流用していたのだ。

 最後に登場する作家は「人権擁護に貢献する人道支援の組織が、実際には会議とコンサート開催のためだけの事務所に変わってしまった」と批判する。海外からも国内からも支援が止められ、活動を続けることができない事態に陥っている。彼は「市民社会組織が本来の役割を果たせるよう、計画や目的を明確にさせ、社会的に監視していくべきだ」と主張している。

ODAが腐敗の元凶

 こうした状況を、援助を受けるイラク側が悪いから、と片付けるわけにはいかない。コメンテーターが指摘するように、NGO活動の多くは占領政策を支えるために導入されてきた歴史がある。たとえば、自衛隊が駐留していた南部サマワでは日本のODA(政府開発援助)百数十億円を使って発電所や浄水場が建設された。現在は全く動いてない。ばらまかれた資金は占領の正当化に利用され、現地で汚職を広げただけだった。日本政府も今日の市民社会組織の腐敗状況を作り上げるのに加担してきたのだ。

 イラクでは、貧困層や生活困窮者を支援するはずの市民社会組織にさえ腐敗が広がっている。政府、各政党も、諸外国も、グローバル資本の利益のためにしか行動していないからだ。サナテレビは、市民が自覚を高め、市民社会組織の活動の民主化を要求しようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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