2019年04月19日 1572号

【みるよむ(514) 2019年4月6日配信 イラク平和テレビ局in Japan 遅れる防衛大臣と内務大臣の指名】

 日本ではほとんど報道されていないが、イラクでは2018年5月に総選挙が行われたにもかかわらず、首相指名は5か月以上もたってからだった。防衛大臣と内務大臣はいまだに決まっていない。政府の重要機関の責任者が長期間空席なのだ。どう考えても異常である。2019年1月、サナテレビは、このような政治状況についてバグダッド市民に意見を求めた。

原因は外圧

 事態の原因を市民活動家が説明する。一言にすれば「イラクの国内政治に外国が介入してきているから」なのだ。米軍はずっと駐留を続けている。イランもシーア派イスラム主義勢力として大きな政治的・軍事的影響力を持っている。トルコ軍がイラク北部のクルド地方に居座ったままであることも指摘する。

 市民は続ける。政府本来の役割は「若者に雇用の機会を提供し、良い商品を作り、農民を励ますこと」、つまり人間らしい生活を保障することだ。しかし、この市民によれば「イラクには2つの大河(ティグリス・ユーフラテス川)があるが、飲料水の供給もうまくいっていない。栽培が十分に可能なトマトや野菜でさえ輸入している」。生活の身近なところから、政府の無能ぶりとそれに対する市民の怒りが伝わってくる。

 メディア関係者も、アブドルマハディ首相が「イランとアメリカの外圧」ばかり気にしていることを批判する。「主権と国民の安全のための省庁」さえまともに機能させていない政府に対し、市民生活を支える義務を果たせ、と求めているのである。「それができないようなら、この内閣は短命に終わる」と断言している。

背景に労働者の闘い

 もちろん内閣を倒すのは市民や労働者の力だ。インタビューの発言の背景に、社会サービス崩壊に抗議して昨年から続く大規模な市民の行動、今年になって展開された教員の全国ストライキ、契約労働者3万3千人の常勤雇用獲得など労働者の闘いがある。

 イラクのイスラム主義政党や民族主義政党は、背後にいる米国、イランの意向を受けながら政治対立を続けている。この現状に対し、サナテレビは市民の安全と生活を守る政治を要求しようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋) 



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