2019年04月19日 1572号

【最低賃金大幅引き上げ、全国一律化を/韓国の最賃運動から学ぶ/日弁連がシンポジウム】

 日本弁護士連合会は4月6日都内で、最低賃金の引き上げには何が必要かを考えるシンポジウムを開いた。

 最初に、日弁連貧困問題対策本部が昨年実施した諸外国の最賃問題調査の結果を報告。韓国の最賃(地域別はなく全国一律)は2016年の6030ウォン(10ウォン=約1円)から19年の8350ウォンへと急上昇し、手当を加味すると1万20ウォンで日本の地域別最賃の全国加重平均(18年)874円を上回る。中村和雄弁護士は「中小零細企業に対し雇用安定資金の支給や社会保険料事業主負担分の減免などの支援がある。最賃審議会の労働側委員には二つのナショナルセンターのいずれにも属していない『非正規センター』『青年ユニオン』の代表が入っている」と説明した。

 韓国では02年に、労働組合だけでなくさまざまな社会運動組織やシンクタンク、政党などを含む31団体で「最低賃金連帯」が結成され、最賃の引き上げという一点で共同行動を重ねてきた。「このことが近年の大幅引き上げに貢献している。日本でもこういう運動ができないだろうか」と中村弁護士は期待を込める。(韓国調査の詳細は『労働法律旬報』3月下旬号に掲載されている)

 続くパネルディスカッションで、龍谷大学名誉教授の脇田滋さんは日本の最賃が低額にとどまってきた背景を明らかにした。「労働組合が全体を代表して底上げする力が劣っている。労働協約が未組織の労働者にも適用される率は、労組組織率11%のフランスで98%に上るに対し、組織率17%の日本は協約適用率も17%と極端に低い。企業間の大きな賃金格差は日本の常識だが、世界では非常識。最賃も中小零細企業の賃金に対応して低く設定される。間接雇用が広がり、“同一労働差別扱い”がまかり通る。世界の派遣法の中で差別禁止規定がないのは日本だけ」

 高度成長期のパートタイマー(主婦)、低成長期のアルバイト(学生・若年者)など被扶養者(家計補助者)であることを前提にした超低賃金雇用が労働慣行となっていた。脇田さんは「これが80年代前半に制度化され、行政によって追認・奨励された。公共職業紹介で、健康保険被扶養者の年収要件130万円、所得税の非課税限度103万円を超えない仕事を勧める。被扶養者という地位に閉じ込めて低賃金を固定化している国はどこにもない。最低賃金近くで働くシングルマザーや“アラフォー”世代の貧困化は顕著」と批判する。

 地域別最賃についても「地方生活者は教育費(大学進学の下宿代)や交通費(自動車利用)の負担が都会よりも大きく、不合理。ただでさえ低い日本の最賃をさらに低水準化する要因になっている」とし、「まず全国一律の最低賃金を決め、その上に韓国で広がっているような『生活賃金条例』でプラスするやり方を学ぶべきではないか」と提唱。韓国では、重層下請け関係で賃金不払いがあった場合に発注者の大企業に連帯責任を負わせ、請負代金から賃金を分離して発注者が労働者に直接振り込むようにする法律が制定されていることも紹介した。

 にいがた青年ユニオン代表の山崎武央さんと山口県地方最賃審の公益委員を務める松田弘子弁護士は、当事者の生活実態に聞く耳を持たない最賃審の実態を暴露した。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS