2019年05月03日・10日 1574号

【追い出し通告に対抗する/避難者の住宅確保の闘い 続く】

 区域外避難者の住宅補償を求めて4月以降も闘いは継続している。

 福島県による国家公務員宿舎入居者の追い出しが進む中、「原発避難者住宅裁判を準備する会」は4月20日、多くの避難者が住む東雲(しののめ)住宅(東京・江東区)そばで講演・説明会を開催し、引っ越し先が見つからない避難者、住み続けざるをえない避難者とともに対策を検討した。

避難者の権利のために

 行き先の決まらない国家公務員宿舎入居者は全国約70世帯。うち十数世帯は生活保護受給者、都営住宅当選者らで、1年限度の継続入居を認めた。しかし、精神的病に悩む避難者、生活保護は受けていないが困窮する世帯、民間住宅等物件探しを続ける世帯、都営住宅当選を待つ避難者らは切り捨てられる。

 生活再建の基礎となる「公的住宅の確保」は、福島県が支援策の柱の一つにしながら一向に進まず、現在でも公営住宅入居を希望する避難者が世帯要件を盾に応募資格さえ奪われている。「個別事情に基づいて対応する、寄り添っていくとした復興大臣発言すら反古(ほご)にするものではないか」。不信と怒りは募る一方だ。

 講演した酒田芳人弁護士は、4月以降の“不法占拠”状態を避けるための「行政財産一時使用許可申請書」提出の意義、不許可となった場合の提訴の流れについて解説。「みなさんは何か悪いことをして住み続けているわけではない。帰ることもできない被害者だ。当局から起こす明け渡し訴訟や損害賠償訴訟と異なり、避難者が原告となって堂々と権利を訴える裁判になる。裁判だけではなく、人とのつながり、専門的知識の獲得、政治への働きかけが重要になってくる」と述べた。

 「一時使用許可申請書」は3月に第1次として福島県・東京都・国(財務省)に提出されたが、返事があったのは国のみ(4/21現在)。許可か不許可かの判断は「福島県からの要請を受けて使用許可しているもの」との理由で示さず、申請書は返送された(4/18付)。宿舎の持ち主である国が貸さないと判断しているわけではない。

 ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)は22日、福島県交渉を行い、「国家公務員宿舎からの退去と損害賠償を迫る通知」の撤回を迫ったが、強制退去方針こそ出さなかったものの、撤回・見直しには消極的だ。福島県の理不尽な対応が際立っている。

 一方、準備する会による17日の交渉で東京都(都営住宅経営部)は「福島県は継続契約を終了したが、都はそれとはかかわりなく支援を続ける。区域外避難者も含め一部の国家公務員宿舎入居者への今後の対応について国と協議を始めたばかり」と報告。準備する会は「宿舎を都の『借り上げ住宅』として使用継続できるよう国に要請を」「国(国土交通省)に話して特定入居を使った避難者の公的住宅確保の道を」と求め、交渉を継続することとなった。

一人も路頭に迷わせない

 ひだんれんと「『避難の権利』を求める全国避難者の会」は25日、「被害者の住まいを奪うな!!緊急集会」を衆院第2議員会館で開催し、復興庁前で抗議集会をもつ。棄民政策をとり続ける福島県に代わって、国が原発事故の責任者として救済施策を打ち出すよう求める。準備する会事務局の小川正明さんは「避難の協同センターや住宅確保を支援する江東の会、キビタキの会のみなさんと連携して“一人も路頭に迷わせない”、当事者を守りきる活動を粘り強く続ける。当事者は少数にはなったが、取り組みを通して原発事故における住宅政策の不作為を焦点化する重要な歴史的役割がある運動だ」と語る。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS