2019年05月03日・10日 1574号

【ILO―ユネスコが是正勧告/教員への不当な扱い中止を】

 「立ちなさい」と管理職が養護教諭に命令した。養護学校(当時)での卒業式で「君が代」斉唱中に人工呼吸器をつけた生徒のアラーム音が鳴る。そこに駆け付け処置をしている養護教諭に投げかけられた。幸い、大事には至らなかったが、通常なら「どうした?」と聞く場面だ。

 この異様な状況は、東京都教育委員会が校長に対し、卒業式・入学式の際に教職員の国旗に向けた起立と国歌斉唱を職務命令として徹底する、違反者を処分対象とすると通達したことによって生まれた。

 4月19日、国会内で一つの集会が開かれた。学校現場で「日の丸・君が代」が強制されてきた問題等に対し、ILO(国際労働機関)とユネスコの合同委員会(CEART)が日本政府に是正勧告した意義を確認しあうものだった。

 アイム'89(東京教育労働者組合)の元特別支援学校教諭渡辺厚子さんは、ジュネーブに行き、子どもたちのどのような権利が奪われたかを訴えた。それに対する日本政府の反論はなかった。

 合同委員会は権利侵害があることを認め、「教員の思想良心の自由と教育の自由は保障される」ことを示した。また、国などは「君が代」斉唱と起立は、単なる儀礼的所作に過ぎないと主張しているが、勧告では、「愛国的な式典」であり、起立や斉唱はきわめて個人的な行為で、それをしたくない教員も対応できるルールを作ることを日本政府に求めている。

 なかまユニオンの中條千尋さんは、「君が代」起立斉唱の問題以外の勧告の意義にも触れた。

 国内法(管理運営事項に関する交渉を拒否できる等)を「盾」にして国際法を無視できることにはならないことを改めて示し、教員・教員組合との協議・交渉をすすめることを勧告した点、教科書選定にあたっての教員の主要な役割が軽視されていることに警鐘を鳴らし、選定における公平性と透明性を求めている点だ。日本の教員に対する処遇が国際基準に及んでいなかったことが明らかになった。

国際法実現する運動

 かつて、女性たちを貶(おとし)めるヘイトスピーチや不当な示威運動を防止するために、「軍慰安婦」が被った人権侵害について市民教育するよう国連が勧告を出した際、安倍内閣は「国連勧告に従う義務なし」(2013年5月) と閣議決定した。今回のILOとユネスコ合同委員会の勧告に対して、またしても「勧告に従う義務なし」という姿勢に終始するか否かが今後問われていくことになる。

 「教員の地位に関する勧告」は1966年、日本も含めた76か国が議論して全会一致で作った基準だ。多くの労働組合が勧告に違反する具体的な問題を合同委員会に追加情報提供していくことで、国際法実現の内実を形作っている。

 国際法が日々の暮らしの中に生きていることをとらえ返す意義を示唆してくれたのが今回の勧告である。

(教職員なかまユニオン・東田晴弘)

 
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