2019年05月03日・10日 1574号

【軍事費を削減し教育・社会保障充実を正面に/闘いで展望示す】

 4月投開票の地方選挙が終わった。市民派候補と市民の共闘は進んだが、安倍政権を打倒するまでには至らなかった。だが、教育・社会保障切り捨て、消費増税、際限のない軍拡路線が信任を受けたわけではない。地方選前半戦を振り返り、以降の闘いについてMDS(民主主義的社会主義運動)佐藤和義委員長に聞いた。(4月12日・まとめは編集部)

真っ向対決が必要

 統一地方選前半戦の結果は、過去最低の投票率、大阪維新の会が大阪で勝ち、北海道では野党統一候補が負け、自民党が若干議席を増やしたというところだ。

 自民党安倍政権から被害を受けている人、政権に怒りを持っている人はずいぶんいる。だが、投票行動に結び付け自民党を敗北させるまでに至らなかった。

 大阪維新の「大阪都構想」というのは、結局、民営化や万博、カジノといった大規模プロジェクトを推進して儲けることだが、その点では、自公と差がない。ならば、現職が強いのは当たり前だ。自民では維新に勝てないということをはっきりさせなければならなかった。

 われわれMDSは、カジノ反対、民営化反対を明確に打ち出したが、選挙戦全体では鮮明にならなかった。

 北海道でも底流にあるのは立憲民主党が共闘に消極的だったことだ。共闘は成立したけれど、積極性が弱い。立憲民主は独自性を強く打ち出し「支持するならどうぞ」という路線だ。枝野代表をはじめ幹部が伊勢神宮を参拝し、批判を浴びた。国民民主党は連合をバックに自民にすり寄っている。右派にすり寄って多数になろうという考えを持っているのでは、安倍と対決はできない。

 次の焦点は、沖縄と大阪の衆院補選だ。沖縄はオール野党だ。大阪は共産党が大胆にも現職議員を無所属で立候補させた。社民党と自由党は支持だが、立憲民主、国民民主は自主投票と、残念なことになっている。だが市民連合をはじめ野党共闘を望む多くの人たちは闘っている。勝たせなければならない。

 やはり、ここまででたらめな安倍政治には、真っ向から対決することが必要だ。変革の展望として根本的な民主的改革、さらには民主主義的社会主義という大きな対抗軸をきちんと打ち出し、その対抗軸に基づいて結集し、共闘を図ることが必要な時だと思う。

青年に展望示す

 地方選前半戦で、われわれが積極的に支持し闘った大阪と横浜の候補が前進した。

 政令指定都市の非常に困難な選挙だが、得票を伸ばしたことは大きい。しかし当選するためには、例えば大阪市城東区では20%の得票率が必要だ。権力の末端構造を本当に地域から変えていく闘いをしなければならない。MDSの総力を挙げてありとあらゆる闘いを市民とともに展開する。地域にMDSの運動と組織を作り、広げて、グローバル資本主義の支配に苦しむ市民の要求を掘り起こし、組織していくことが本当に必要だ。それが可能であることを大阪と横浜で示した。

 地域からのグローバル資本主義との闘いは、アメリカや沖縄に学び進めていく。

 アメリカの民主党左派、サンダースやDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)のオカシオコルテスといった左派たちの闘いは、トランプ政権と真っ向から対抗している。特に公的医療保険制度創設の要求を前面に押し出し、有利な局面を作り出している。オバマケアも民間医療保険が中心であったようにアメリカには公的医療保険は結局なかった。だが、サンダースやオカシオコルテスに影響され民主党大統領選候補の多くが公的保険を財源問題を含めて言い始めている。グローバル資本主義と原理的に対決する動きが強まってきている。

 沖縄でも困難な闘いだが、国政選挙・知事選も住民投票でも勝利していった。諦めを誘う安倍に対して、スローガンを明確にして闘い、展望を示すことだ。

 安倍は小選挙区制度で国会の多数をとり、官僚人事を握ることで政府を牛耳り、おごり高ぶっている。桜田五輪相の「復興よりも議員が大切」発言は、ハードルがなくなり思っていることをそのまま口に出してしまったに過ぎない。桜田は辞任させざるを得なかったが、安倍は自分のために働いたり忖度(そんたく)した人は首にはしない。「統計詐欺」がそうだ。そういうことが繰り返されると怒りとともに失望感を持つ。

 安倍たち権力者は、多数の支持を得ようと思っていない。得ることはできないと分かっている。だから詐欺的行為で綱渡りの勝負をして諦めを組織し支配しようと繰り返している。

 改元を政権浮揚に政治利用したりと宣伝は見え透いている。だが、メディアが演出して一役買っている。際限のないメディア支配でごまかされている。NHKの人事では、安倍政権への共鳴者が専務理事に復活した。争点を明らかにする選挙報道をしない、国会の対決局面を報道しない、野党を悪者と描く、安倍の発言を検証もせず垂れ流す。

 しかし、詐術的な支配もあちこちでほころびが出てきている。新潟県議選は自民党が5議席減らし、和歌山県議選では共産党候補に負けた。突破する闘いが必要だということだ。

富を教育・社会福祉へ

 低投票率だったり、安倍や維新にごまかされ、あるいはやむなく自民や維新に投票するというのは、展望と確信を持てていないからだ。とりわけ青年層に顕著な問題だ。学校教育システムに抑圧され、就職活動でも抑圧され、非正規雇用が広がる職場でもそうだ。その結果、青年たちは沈黙を常とするしかないようにされてきた。MDSはそういう青年たちや子育て世代に働きかけていく。

 安倍や維新の政策は、基本的人権の否定だ。彼らは「全世代的社会保障」と言い、「若者に手厚くし、経済成長させ、老人に波及させる」と言うが。結局、老人医療・介護をカットし、教育も保育も安上がりに済ませようとする。

 様々な負担を増やし高齢者の生活保障をせず要介護1、2をなくすことを考えている。保育所の数は増やすけれども、質は問わない。園庭のない保育所でもいい、施設・人員の基準を緩和しでたらめな企業内保育所なども認め、保育環境の悪い施設をたくさん作って「待機児童ゼロ」だという。学童保育の職員は常時2人以上という配置基準を1人でよいとする。子どもたちの基本的人権を保障して拡充するということでなければならないのに、切り縮めていく。

 日本には富はちゃんとあるんだ。しかし財源をすべて、軍拡と大規模プロジェクトといったグローバル資本のために使っていく。F35戦闘機やイージスアショアを買い、リニア新幹線、オリンピック、大阪万博を進める。一方で大企業や富裕層には減税する。そのためには、多くの市民から消費税をとり、社会保障、教育、すべてのサービスをカットするしかない。これを「全世代型社会保障」などのデマでごまかそうとするのが、安倍・維新のやり口だ。戦争を遂行する国家、軍拡国家は人権を抑圧し、削っていくものだ。

 衆院補選と地方選後半は「軍拡ではなく、社会福祉を」というスローガンを打ち出し、民主主義に貫かれた社会を展望できる対抗軸をはっきりさせなければならない。改憲阻止と市民生活擁護はイコールだ。憲法9条と25条はセットなんだ。消費税増税・福祉削減・教育削減に反対し、教育完全無償化・介護削減反対、軍事費を福祉・教育へと打ち出していく。

世界の市民と連帯

 選挙とともに、東アジア平和情勢の前進も考えなければならない。

 最近のトランプ米大統領の言動はでたらめだ。INF条約(中距離核戦力全廃条約)からの離脱、ゴラン高原の主権はイスラエルにあるといった発言などだ。しかし、米朝交渉進展の展望は残っているし、そうさせなければならない。日・韓・米市民の平和を求める闘いこそが必要で、連帯しなければならない。

 韓国政府はF35A戦闘機を40機導入する予定だ。ソソンリのTHAAD(高高度防衛ミサイル)も本格稼働させようとしている。日本政府はアジアの平和に敵対し、辺野古新基地建設を進め、南西諸島で自衛隊基地建設・部隊配備を進めている。

 トランプ、文在寅(ムンジェイン)、安倍の動向を踏まえれば、南北首脳会談や再度の米朝首脳会談を開催させ平和への合意をつくらせていくのは、まさに闘いの力にかかっている。

 そういう観点で見ると、ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)の5月韓国連帯訪問、6月沖縄・韓国連帯スピーキングツアーは大きな意味がある。

 沖縄の反基地の闘い、韓国でのTHAADや軍事基地拡張反対の闘いに連帯しながら、沖縄・韓国の民衆とともに闘い、アジアの平和を自らの手で作り出していくことの積極性はまさに大きい。この闘いで安倍を追い込んでいかねばならない。

沖縄・米国の闘いに続く

 世界に目を向ければ、新自由主義政策への市民の怒りで国民投票に敗れたイギリスの支配階級が、EU離脱問題で無様なことになっているのは象徴的だ。でたらめの極みとなっているグローバル資本主義の現状に、社会主義の展望をもって闘っていくことが必要だ。

 資本の側は、右翼やデマゴギーを使って乗り切っていこうとするだろうが、すべてに対抗して勝っていかなければならないし、その展望はある。極端な格差社会、戦争と貧困のグローバル資本主義に対して立ち上がっている。日本だけ例外であるわけがない。

 繰り返すが、諦めずに闘うことだ。沖縄であれ、アメリカであれ、困難な状況でも闘いを前進させ勝利してきている。その闘いに学びながら、MDSは全国的な政治闘争と、地域変革の闘いを結合してグローバル資本の支配を地域から崩壊させる。









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