2019年05月17日 1575号

【安倍がまたも改憲メッセージ/ミサイルNO、給付奨学金YES】

2020年改憲に執念

 安倍首相は5月3日の憲法記念日にまたぞろ日本会議系の「第21回公開憲法フォーラム」に「2020年に新憲法施行の気持ちは変わらない」としたビデオメッセージを送った(抜粋参照)。

 まず自衛隊員の「誇り」のために憲法変えるなどありえない。自衛隊=軍は戦争し人を殺すための戦力であり、違憲の存在を合憲化してはならない。

 次に教育無償化。これは立法で可能だ。憲法第26条は「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」とする。法律で「無償化」を定めれば済む。改憲項目に教育無償化を入れたのは、日本維新の会をパートナーとするためだ。「貧困の連鎖」を生み出すのは、国際的にも低水準の最低賃金と非正規雇用だ。

 最後に「令和元年という新たな時代のスタートライン」と天皇退位・新天皇即位も持ち出した。大宣伝を改憲に利用するものだが、天皇家の代替わりや「改元」で情勢が変わるわけでも国民生活が変わるわけでもない。譲位とともに元号を変えるのは「天皇は時をも支配する」という天皇神格化の一環であり、一連の儀式も政教分離違反だ。憲法が定める国民主権と相容れない。

軍事と人権が同等に

 安倍は憲法を変えることで、戦争と貧困推進の新自由主義政策を「国づくり」の基本に据えようとしている。

 憲法の3原則は、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重だ。その平和主義の根幹である憲法第9条に自衛隊を書き込むことは国民主権、基本的人権の尊重と軍事が肩を並べることを意味する。

 安倍は「憲法に自衛隊を書き込んでも、自衛隊の役割は変わらない」「平和主義は堅持する」と繰り返し強調する。

 だが、自衛隊の役割は、大きく変貌している。安倍は閣議決定で憲法解釈を変更し、集団的自衛権行使を容認した。そのうえで、海外派兵を拡大し、派兵先で武力行使を可能とする戦争法制定を強行した。そして戦闘地域である南スーダンでPKO(国連平和維持活動)を続け、ジブチに恒久的な海外基地を持つに至った。自衛隊は「地球の裏側での武力行使」が可能な軍事組織となっている。

 この自衛隊が合憲となり軍事と基本的人権が同等となれば、基地周辺住民による爆音訴訟のような人権保障に基づく軍拡への異議申し立てすら困難となる。予算配分は時の政権の政策次第となり、攻撃兵器の大量購入と派兵費用がかさめば、軍事費は青天井。医療・教育・福祉予算を食いつぶす。

軍事費削り人権保障を

 安倍は19年度予算で5・3兆円の軍事費予算を計上した。7年連続の増額で、5年連続して過去最高を更新した。

 際立つのは攻撃兵器の大量購入だ(表1)。「ミサイル防衛」もイージスアショアなど反撃に備えた大規模なもの。軍拡は宇宙空間からサイバー空間にまで及ぶ。辺野古新基地建設と南西警備部隊配備は日米共同の中国包囲網であり、将来の自衛隊出撃基地化を狙ったものだ。

 この予算を生存権保障や教育権保障に振り向ければ、(表2)の政策が可能となる。イージスアショア(取得費1基1202億円)2基導入への今年度分経費1757億円をやめるだけで、社会保障費削減1200億円、生活保護費削減160億円、75歳以上医療保険費特例削減170億円が復活でき、表1の新たな攻撃兵器取得費用で学生60万人にひと月4万円の給付型奨学金を4年間支給できる。


圧政許す緊急事態条項

 ビデオメッセージでは触れなかったが、自民改憲案は「緊急事態条項」を創設している。いったん、緊急事態を宣言すれば、内閣は法律と同等の政令を制定することができる。人権制限と地方自治体の自治権はく奪で、戦時下の挙国一致体制を築くものだ。安倍はすでに辺野古新基地建設と高江ヘリパッド建設で数々の民衆弾圧と違法行為と沖縄県民の自治権否定を強行している。緊急事態では、これに輪をかけた圧政が日本全国で引き起こされることとなる。

 「軍事費を削り、人権保障を」「辺野古新基地建設中止、地方自治と人権を守れ」の世論を広げることが安倍改憲を押しとどめる。

安倍改憲ビデオメッセージ抜粋

 すべての自衛隊員が、強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えるため、憲法にしっかりと「自衛隊」と明記し、違憲論争に終止符を打つ。

 「貧困の連鎖」を断ち切るため、家庭の経済状況にかかわらず、すべての子供たちに真に開かれたものとしなければならない。このことをしっかりと憲法に位置付けなければならない。

 令和元年という新たな時代のスタートラインに立って、どのような国づくりを進めていくのか、この国の未来像について真正面から議論を行うべきときに来ている。
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