2019年05月24日 1576号

【辺野古ありきで土砂投入強行 海兵隊グアム移転で建設名分失う 性暴力生む基地も軍隊もいらない】

何が「令和新時代」か

 「令和新時代」―どれだけ騒ぎ立てようと、政府の辺野古への姿勢は変わらなかった。

 5月8日早朝、沖縄防衛局は、再び新基地建設に向け名護市安和(あわ)の琉球セメント桟橋にダンプカーで土砂を運び入れようとした。市民ら70人がダンプカーの前で搬入を阻止するためプラカードを掲げ、県警機動隊から規制されながらも声を上げ続ける。「埋め立てやめろ」「県民の民意は新基地反対」「国には負けないぞ」。抗議はダンプカーが構内に入るまで続いた。

 辺野古崎大浦湾側の海底には軟弱地盤に加え活断層も見つかり、米海兵隊でさえ「2019年度海兵航空計画」では辺野古新基地建設に伴う施設建設計画を削除している。だが、防衛局は辺野古ありきで工事を強行している。

海外から作業船の無謀

 大浦湾側海底の軟弱地盤改良工事に使用する作業船について、沖縄防衛局が海外からの調達まで検討していることが分かった。

 防衛省が国会に提出した報告書では、海上からの地盤改良に3年8か月、陸上での地盤改良に1年1か月の工期を見込んでいる。海面から70b下にある地盤に砂の杭を打ち込む「サンドコンパクションパイル工法」と呼ばれる工事には最大11隻の国内の作業船を投入する計画だ。ところが、国内に使用可能な作業船は15隻しかなく、海外からの調達が浮上した。これほど大規模かつ荒唐無稽の工事が必要という時点で、新基地建設工事の計画は破綻していると言わざるを得ない。

 それでも5月7日、岩屋毅防衛相は「できるだけ早く設計を行い、できるだけ早く県側と真摯(しんし)に話をして工事を着実に進めたい」と強調した。行く末が見えないことも顧みずひたすら既定方針で突き進むさまは、アジア太平洋戦争で何の「目算」もなく軍隊をアジア全域に投入し続けた大本営に重なる。

 沖縄県は、沖縄防衛局から提出されるこの大規模工事に関わる設計概要の変更申請について許可しない考えをきっぱりと示している。にもかかわらず、防衛省―防衛局は県との話し合いにも応じず強硬姿勢を変えない。安倍政権の基本姿勢だからだ。一日も早く安倍を倒し、辺野古新基地建設計画を止めよう。

「辺野古が唯一」破綻明らか

 日米両政府が合意している在沖縄海兵隊の米領グアムへの移転計画で、米軍が2025会計年度の前半(24年10月〜25年3月)に移転を始め、約1年かけて完了させる方針をグアム議会に伝えていたことが明らかになった。建設中の新たな海兵隊基地の名称は「キャンプ・ブラズ」の予定。移転する隊員数は約5千人と報じられたが、すでに12年4月、在沖海兵隊の約6割9千人をグアムやハワイに移す日米合意が行われている。

 一方、辺野古新基地建設工事は、この先13年以上もかかる。グアムなどに海兵隊の大半を移転するなら、米軍にとって辺野古新基地に意味がないことは誰が考えてもわかる。

 辺野古新基地とは、日本政府が自衛隊「水陸機動団」(=日本版海兵隊)の海外派兵への出撃基地として使用するために造るものに他ならない。これほど沖縄県民が新基地建設に反対しても一顧だにせず、「辺野古が唯一の解決策」と呪文のように繰り返す。「普天間の危険性を除去するため」ではなく、最新鋭の巨大新基地を欲する安倍政権の思惑から出ていると考えれば、当然の言葉である。

性暴力の製造工場

 米兵が沖縄で女性への性暴行事件を繰り返す背景が改めて鮮明に示された。

 米国防総省は5月2日、性的暴行に関する年次報告書を発表。それによると2018会計年度の米軍内性暴力被害者は、同省推定で約2万500人にのぼる。軍隊内で1年間に2万人もの兵士や雇用者が性暴力を受けているのだ。2年前と比べ約38%も被害者が増えているという。

 軍隊は住民を守らない≠ヌころではない。軍自体が性暴力を多発させる製造工場になっている。戦争を使命≠ニする軍隊は、人殺しのために人間の正常な人格を破壊しなければならない。軍隊と基地をなくさなければならない根本的理由はここにある。軍隊と基地という非人間的な存在はどこにも必要ない。どこかに移転すればよいという問題ではないのだ。

 莫大な国家予算を投じ、性暴力を多発させる基地を抱える社会は壊れている。米国、日本だけでなくあらゆる国で軍事予算を社会保障や教育に回すことが人類にとって緊急に求められている。「すべての基地撤去」「軍事費を削って暮らしにまわせ」の運動を今こそ世界中で展開するときではないか。    (N)



 
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