2019年06月07日 1578号

【京都・市民放射能測定所 開設7周年のつどい 低線量被ばくによる健康被害は明らか】

 京都・市民放射能測定所(京都測定所)は5月19日、市内で「開設7周年のつどい」を開催し、約40名が参加した。

 京都測定所は、福島原発事故により京都に避難してきた人たちの「放射能汚染から避難してきたのに汚染食品の流通やがれき焼却で放射能が追いかけてくる」という不安に答え、関西初となる市民測定所として2012年5月19日に開所。以来丸7年を迎えた。

 測定所会員はピーク時の300名から100名足らずとなり、測定依頼も減少しているが、食品や土壌の自主測定を積み重ね、丹波橋測定室では同一検体の複数回測定を含めて2500回、三条御前(おんまえ)測定依頼所では1200回の測定を行い、測定データを蓄積し、ウェブサイトですべて公開してきた。

 京都測定所は、こうした測定活動に加えて、「低線量被ばくによる健康被害」の問題を正面からとらえ社会的に広げていく活動を重視してきた。今回の講演はそのための重要な取り組みであり、昨年度からは講演内容を報告集にまとめ、広く販売する活動も行ってきた。

健康被害の訴えは正しい

 今年のつどいのテーマは「低線量被ばくによる健康被害を明らかにする」とし、本行(ほんぎょう)忠志さん(大阪大学医学部教授)からは「低線量被ばくの影響について」と題して、入江紀夫さん(医療問題研究会、小児科医)からは「周産期死亡の増加、先天性障害の分析から」と題して講演していただいた。

 本行さんは、これまで大学以外で発表したことがないデータも含めて多数の資料を示しながら、(1)放射線感受性には個人差があり、胎児・小児は放射線の影響を受けやすい(2)放射線を浴びた後に様々な有害物質に曝されることにより、がんにかかりやすくなる可能性がある(複合影響)(3)放射線被ばくが光線アレルギーや化学物質アレルギーを引き起こす可能性がある(4)低線量被ばくで甲状腺がん、乳がん、白血病などの疾患が発生している(5)福島での被ばく量は過小評価されている可能性があり、低線量被ばくでも甲状腺がん発生の可能性がある、と話された。

 特に、マウスを使った研究により、放射性感受性に大きな個人(体)差があることが明らかになっており、被ばく線量と水晶体皮質混濁、重度脱毛のデータが提示された。

 また、同じ親マウスから生まれた兄弟マウスにおいても、ヨウ素131の甲状腺取り込みは4倍の差があった。

 さらに、放射線の複合影響や放射線アレルギーについての研究結果も報告された。これらの内容は、避難者が訴える健康被害を的確に説明することができるきわめて重要な研究であると言える。

 入江さんは、(1)原発事故後に汚染地域で周産期(妊娠22週から出生後7日未満までの期間)死亡率の上昇が見られる(2)乳児の複雑心奇形の手術件数が増加している(3)福島県「妊産婦に関する調査」で胎児の外因性異常が増加していることをみても原発事故による胎児への影響は明らかだと話した。

6・13京都訴訟控訴審へ

 原発事故はいまだ収束せず放射能汚染が続いている。それにもかかわらず、老朽原発の稼働延長や新増設が狙われ、放射線被ばくによる健康被害はないものとされている。こういう情勢だからこそ、市民が作る京都測定所には、放射線による健康被害について広く発信していく重要な役割がある。京都府精華町に保養の家の開設をめざす取り組みもこうした取り組みの一環であるといえる。

 なお、京都測定所の避難者スタッフが原告として参加している原発賠償京都訴訟の控訴審第3回期日が6月13日(木)午後2時30分から大阪高裁で開かれる。ぜひ多くの方の傍聴をお願いしたい。

(京都・市民放射能測定所代表 奥森祥陽)

 測定所6周年の講演パンフレット(500円)も販売中 問い合わせは http://nukecheck.namaste.jp/


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