2019年07月05日 1582号

【辺野古新基地/無法を重ねる辺野古埋め立て/申請にないK8護岸を使用】

 沖縄防衛局は6月11日、名護市辺野古新基地建設を加速させるため辺野古崎最先端部分の「K8護岸」からの土砂陸揚げを開始した。これまで土砂運搬用の桟橋として使用していたのは、大浦湾北側の「K9護岸」だけだった。2つの護岸の併用で運び込む土砂量を増やし、工事を加速させて台風シーズン到来までに辺野古側浅瀬の工区A―1に目途をつける狙いだ。

 しかし、K8護岸を新たに土砂陸揚げに使用することは当初の埋め立て承認申請の計画にはなく、目的外使用であり違法だ。沖縄県は、政府・防衛省を厳しく批判し抗議を続けている。岩屋毅防衛相は、申請時の「設計概要説明書」についての説明を二転三転させながら「陸揚げは問題ない」と強弁。違法工事を重ねる政府に玉城デニー知事は11日、「海上搬入や陸揚げ作業の強行は、暴挙以外の何ものでもない。法令順守の意識を欠いているものと疑わざるを得ない」と強く批判し、工事中止を求める行政指導文書を沖縄防衛局に突き付けた。

国の「計画通り」進まず

 6月14日、政府が昨年12月辺野古側に土砂投入を開始してから半年を迎えた。埋め立て工区A(約33・8f)とA―1(約6・3f)で必要な土砂はトラック約20万台分に相当する124万立方bだが、投入された土砂は4分の1にとどまる。

 埋め立ての進行状況について防衛局は、工区A―1は「5月末までの約6割」、3月から始めた工区Aは「少量にとどまる」とする。計画通りには進んでいないことを認めざるを得ないのである。そのため今回、申請にも記述していないK8護岸からの土砂陸揚げという手段に打って出た。しかし、K8護岸周辺も浅瀬で大型船の接岸は困難であり、高波の日には陸揚げできない。違法な工事を強行しつつ無謀なまま突き進んでいるのが新基地建設工事だ。

知事が全国キャラバン

 こうした中で玉城知事は、米軍普天間飛行場の返還と名護市辺野古の新基地建設など沖縄の米軍基地問題を世論に喚起する全国キャラバンをスタートさせた。

 6月11日、第1弾として東京都内でシンポジウム「We love OKINAWA」を開催した。基調講演で知事は「政府は辺野古が唯一の解決策というが、どこと比べて唯一なのか、県民は説明を受けたことはない」と強調。工事の違法性を指摘する沖縄県に対し、行政不服審査法など「解釈をねじ曲げた」国の対抗措置を挙げ、「日本の民主主義も地方自治も成り立たない。だから(全国民の)自分事(ごと)なんだ」と強調した。

 また、やりたい放題の辺野古の現状をめぐって、ロシアのプーチン大統領が「知事が反対しても(工事が進む)そういう主権国家の姿を見ると、(日露)平和条約を結ぶのは難しい」と言っていることを紹介。「平和条約締結のブレーキを踏んでいるのは安倍晋三首相本人だ」と、国際的視点からも安倍政権批判を展開した。

脆弱な県の対応に抗議

 玉城デニー知事の辺野古に新基地は造らせないという信念は揺るがない。翁長雄志前知事の遺志を継ぎ、闘いの先頭で奮闘している。

 しかし、辺野古キャンプ・シュワブゲート前で闘い続けている市民には「どうして県は新基地工事を加速させるような赤土の仮置き場を許可したのか」との怒りが渦巻く。これは、工事の土砂を搬出している名護市安和(あわ)の琉球セメント桟橋に土砂を仮置きすることを、県が赤土流出防止条例に基づくとして許可したからだ。許可しなければ辺野古への土砂搬入ができなくなるにもかかわらず、である。

 6月12日、ゲート前の市民25人が北部保健所に集った。県の許可に抗議し見解をただし、座り込みを開始した。沖縄平和運動センターの山城博治議長は「新基地建設反対を掲げる県政が安和からの土砂搬出を後押しするようでは怒りの向け先がない」と憤る。

 県庁内に、基地推進に踏み切った仲井眞弘多(ひろかず)元知事の残党が残っているだけではない。沖縄平和市民連絡会の上間芳子さんは「今の県政は、辺野古新基地建設の総論では反対、だが各論で賛成しているようにしか見えない」と県幹部の脆弱さを指摘する。7月、サンゴ移植を認めるかどうかが次の大きなポイントだ。県に対する監視も怠ることはできない。

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 6月17日、総務省の「国地方係争処理委員会」は、沖縄県による辺野古埋め立て承認撤回を取り消す国の裁決は違法とする県の審査申し出を「国の裁決に瑕疵(かし)はない」と却下した。沖縄県は不服として福岡高裁那覇支部に訴訟を起こす。辺野古は再び、法廷闘争に入る。  (N)



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